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作成した小説を保管・公開しているブログです。 現在は連作短編が二篇の他,短編小説,エッセイの類を掲載しています。 連作小説の更新ペースは随時。二か月に三回を最低ラインとして目指しています。
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ネガイカナヘバ 4
黒猫堂怪奇絵巻6話目 ネガイカナヘバ掲載4回目です。
6話目はこれで折り返しです。

ネガイカナヘバ1
ネガイカナヘバ2
ネガイカナヘバ3

今までの黒猫堂怪奇絵巻
黒猫堂怪奇絵巻1 煙々羅
黒猫堂怪奇絵巻2 虎の衣を駆る
黒猫堂怪奇絵巻3 とおりゃんせ
黒猫堂怪奇絵巻4 迷い家
黒猫堂怪奇絵巻4.5 薄闇は隣で嗤う
黒猫堂怪奇絵巻5 キルロイ


―――――――――

 気迫のこもった掛け声とともに、竹刀が空気を斬る。
目の前にいた相手に竹刀がかすりもしなかったことに、選手は身を固める。隙だ。
竹刀の一撃をかわした相手が、小手へ打ち込む音が武道館に響いた。試合は終了だ。
 香月フブキは武道館の入り口に立ってその様子を眺めていた。
 見事に小手を決めた選手が面を外すと、見覚えのある顔が現れた。
 フブキに気が付いたらしく、軽く手を上げる。
「ようやく来てくれたね。上月さん」


 陽波高校剣道部三年。大森優香。巻目市の周辺には女子の剣道部は存在しないにも関わらず、こうして剣道部の練習に顔を出している。
 同年代の男子生徒を圧倒すると聞いたが、確かに彼女の動きに追い付くのは難しいだろう。
「すごい試合ですね。私、剣道の試合を見るのは初めてだったので驚きました」
「そんな風に言われるともどかしいな。私のはまだまだ甘い。彼らの隙をついているだけさ」
 大森はそう言うと、武道館内の部員に向かって、練習を開始するように声をかけ、また、武道館の奥の一角を空けるように指示をした。
「さて、来てくれたということは、私の誘いに乗ってくれたのかな」
「私は部員ではありませんし、ほかの部員の練習時間がなくなりますよ」
 大森はゆっくりと首を振って、フブキの手を掴んだ。
「何事も経験だよ、それに君ならすぐに身体が追いつくと私は思っている。まあ、先輩のお願いだと思って一回だけ付き合ってくれるとうれしいね」
 あれよあれよと話をはぐらさかせるうちに、いつの間にか胴着を付けて、あとは面を被ればフブキも立派な剣道の選手だ。
「大丈夫、先ほど話した通りに竹刀を扱えば様にはなる。きちんと学ぶためには時間がかかるんだが」
 大森はそこまでいって、フブキの耳元に顔を近づけた。
「君は剣道でなくとも剣を振るったことがあるだろう?」
 そう囁いてフブキから離れ、自分の面を置いた場所へと戻っていく。
その一言にフブキの背筋はこわばった。彼女はフブキの何を知っているのだろうか。
「ぼーっとしていたら始まらないよ。上月さん、面を付けて」
質問をしようにも、相手の表情は面に隠れたままだ。フブキも覚悟を決めて面を被る。
竹刀は水蛟より遥かに軽く、そしてフブキの霊感とつながらない。
「さあ、始めよう。上月さん」
 大森は間合いを詰めて竹刀を振りかぶる。両手で構えた竹刀からとっさに右手を放し、左手一本で竹刀を構えて大森の一撃を防ぐ。
 しかし、竹刀は軽い。大森の竹刀の衝撃に弾かれ、フブキは思わず体勢を崩した。
「なるほど、片手で剣を振り回すのが、君のスタイルか。でも、竹刀は勝手が違うようだね」
「さっきから何を話しているんですか、先輩。私は剣を持ったことないですよ」
 体勢を立て直し、竹刀を構えなおす。今度は両手を放さない。
 
10戦10敗。水蛟を使わない自分の弱さを思い知らされた。
武道館の壁に寄りかかり息を整えていると、胴着を脱いだ大森優香が水をもってきた。
その表情は、フブキが武道館に入ったときと変わらない。
フブキは思わず壁から離れた。霊感を使って無理やり息を整えた。
「さっきの試合は面白かった。もしよければまた時間を見つけて練習に参加してくれないか。もちろん、次は基礎練習も含めてだが」

時間を見つけて参加するとは言ったものの、その後、七不思議の調査に時間を割かれ、フブキは武道館から距離を置いていた。ようやく武道館に顔を出したのは、佐久間ミツルが退院して約二週間が経過してからだ。

武道場に入った瞬間、耳に入ったのは竹刀が床に叩きつけられる音だ。
選手が一人、床に座り込んでいる。彼の首先には竹刀が突きつけられている。
「弱い。次」
面の奥から大森優香の声が響く。
抑揚のない言葉に部員たちがざわめくと、彼女は竹刀で空中を薙いだ。
「そこに立っていて何が始まる。練習なのだろう」
やがて、部員のなかから押し出されるようにして一人の男子生徒が現れる。表情がこわばっており、大森を恐れて、いや怒っているように見える。
「岡か。試合は三日ぶりだ。三日前よりも強くなったのか?」
岡と呼ばれた生徒は大森の問いに答えず、面をつけ、竹刀を構える。

面をつけた岡が大森優香の前に立つ。試合は静かに始まる。
掛け声とともに大森に向かう岡の連撃を、大森はすべていなす。岡の打ち込みは徐々に荒く力任せに変わっていく。無理やり面を打とうとして胴に隙が生まれる。
瞬間、大森が体勢を下げて懐に飛び込む。竹刀が胴着を打ち付ける音が武道館に響いた。
「弱い。他に試合をしたい奴はいないか。おや、久しぶりだね。上月さん」
 大森はフブキの姿を見つけた。フブキは、大森の次の言葉を知っている。
「さあ、試合をしようじゃないか」

 面に阻まれた狭い視界が、縦に両断される。
 飛びのいた両足が床に着くと同時に、フブキは竹刀を構えた。大森の一撃をなんとか竹刀で受けるも、その重さに身体が数センチよろめいた。
 小手と面を狙っての連撃、対応が遅れた瞬間を狙っての突き。一瞬でも反応が遅れれば死ぬ。試合のはずなのに、大森の攻撃の全てがフブキの命を狙うかのように鋭く、冷たい。
 試合を始めてから、フブキは防戦一方だ。
「どうした、上月。戦う気がないのか。このままでは君の勝ちはない」
 以前の試合よりも直接的な挑発。だが、フブキは挑発に乗ることはない。
 試合場の端に立ったフブキは、何度目かわからない大森の連撃を竹刀で受ける。一発目で体制が崩され、二発目が面に入った。
 試合場の中央へ戻り、大森に対して礼をする。
「上月。君は本気を出してはいないだろう。もう一試合付き合ってくれないかな」

大森優香のみに何が起きたのか。
武道館での二試合を終え、フブキは校舎の屋上で、枯れ桜を眺めていた。

試合中の彼女にまとわりついた重たい気配。それは、彼女の膂力を引き上げ、あるいは精神の枷を緩めていた。フブキが水蛟とつながるときとよく似ていた。
大森優香は何かに憑かれている。だが、その正体はわからない。
まるで鬼憑きだ。
「上月桜さん?」
 気が付けば、倉橋守が横にいた。フブキは驚き、目の前の柵から手を離した。
 倉橋守。監視している生徒の一人ではあるが、フブキから声をかけたことはなかった。彼は、先ほどまでのフブキと同じように柵を手にし、枯れ桜を見つめていた。
「あなたも、あの桜を見たいのか。残念だが、ここで見ていても咲かないよ。満月がなければ、あの桜は見られない」
 倉橋はフブキの隣を離れ、屋上の南側、グラウンドへと歩いていく。
フブキは倉橋の言葉が気になって彼の後を追いかけた。
「水が満ちてきている」
「水?」
「初めて見た時より深い。満月の頻度が増えているから、水が増えるのが早い」
 倉橋の語る水がなんであるのか見当が付かなかった。それに、満月の頻度が増えるというのはどういうことだろうか。
「倉橋君? 何を言っているの」
「桜がみたいなら、急いだほうがいい。水が満ちてしまえば、桜は咲かなくなる」
「ごめんなさい。私には倉橋君が何を言っているのかわからない」
 倉橋はフブキに対して、携帯端末を差し出した。
「もし、桜を見たいのなら、僕は手を貸そうと思う。僕はあの桜がきれいだと思う。だから、これ以上水が増えるのは好ましくない。けれども、僕はどうしたらいいかがわからないんだ」
 倉橋の顔がぼやけたような気がした。

 気が付くと、フブキは放課後の空き教室で転寝をしていた。長い時間眠っていたらしく、とても身体が痛い。屋上で倉橋守と話をしていたはずなのに、その後の記憶が欠落している。本当に倉橋とやり取りをしていたのかどうかさえ、記憶が曖昧だ。
「あ、携帯」
 フブキの手には、見知らぬ携帯端末が握られている。倉橋守から受け取ったものだ。

******
 画面いっぱいに表示された携帯端末のアプリケーションリスト。岸則之はそのアプリケーションの中身を次々に精査していく。
「特に目新しいアプリケーションはない」
「そんな、ちゃんと調べてよ」 
「わかっている」
「だったら、ほら、ちゃんと」
 香月フブキに背もたれを蹴られ、岸は顔をしかめた。
「この携帯のほかにも、文芸誌やら噂話やら、大量に集めているだろう。ちせの研究室の一角が図書館みたいになっているのを見たぞ」
 鬼憑きの調査が難航していることは知っている。陽波高校に潜入した後も、香月は核心となる情報を集めきれていない。明確な手掛かりがなく、フブキは苛立っている。
「一度、情報を整理してみたほうがいい。今回の件は情報が大量に入ってきているが、軸が見えていない。だから、何が起きているのか掴めない。そういうことだと思う」
「整理しているつもり。七不思議と桜、それに、鬼。これらは全部何かで繋がっている。その何かがまだ掴めないだけ」
 整理されていないということだ。岸は言葉を呑みこんで携帯内の情報整理を続ける。アプリケーションには目立ったのもがなかったため、現在モニターには画像データを表示している。
 画面を流れる大量の画像データを流しているうちに、一つの写真が目に留まった。
「香月。確か、陽波高校の狂い桜は咲かなかったんだよな」
「え、そうだけれど」
 では、この画像は何だろうか。撮影日は香月が夜桜の確認に行った日付と同じだ。
 画像は一本の桜の樹だ。枝には満開の花。香月が陽波高校の外で遭遇した鬼憑きの部屋にあった写真と同じだ。彼らの写真との違うとすればこの画像データはカラーだということだ。
 奇妙なことに花は桜色ではなく、銀色である。画像に関連付けられたGPSの座標は、陽波高校の校庭。
つまり、倉橋守は、校庭の桜が銀色の花で満開になったところを見たことになる。
「香月。今すぐ他の奴呼んで来い、そして今まで調べたことを説明しろ」
 おそらくこれが欠けたパーツの正体だ。

*****

・陽波高校新聞部の調べた陽波高校七不思議
・陽波高校文芸部 二月正の書いた「陽波高校七不思議」
・陽波高校とその近所で出回っている黒地図の噂
・迷い家に憑かれた陽波高校の生徒、佐久間ミツル
・校内外で現れる鬼憑
・咲くはずのない桜の写真
・怪異の気配がする女子高生、大森優香
・その他、陽波高校内で体調不良で休んだ学生たちの名前と顔写真

ホワイトボードを埋める情報とそれらを繋ぐ線。情報を書きだしているのは香月フブキ、書きだした情報に対して、意見を言っているのは岸則之だ。
普段なら香月が岸を蹴り飛ばしていそうだが、不思議と岸の意見を聞いている。
「いったいなんなのこれ」
 遅れて会議室に到着した鷲家口ちせが、夜宮の隣で驚きの声を上げた。
「私も来たばかりですので。しかも、秋山さんの代理ですし」
 秋山から携帯に連絡が入り、指示に従ってやってきてみればこの様子だ。秋山には岸と香月を手伝ってほしいと言われたが、何をしているのか皆目見当が付かない。
「研究室からフブキの集めた資料がごっそりなくなっていたのは、こういうことか」
「こういうこと?」
「岸はあくまで分析官だからね。秋山とか沙耶ちゃんの力が借りたいということよ」
 ちせが秋山と自分をひとくくりにするものだから、なおさら話がつかめない。
「沙耶ちゃんたちの想像力は、岸や私にはないのよ。岸はあくまで分析官としての腕を買われてここにいる。彼は祓い師が集めてきた情報から流れを掴むことはできても、欠けているパーツを埋められない。フブキは直感型だし、行き詰まりを感じたんでしょう」
 
祓い師、香月フブキ。比良坂民俗学研究所分析官、鷲家口ちせ、岸則之、変異性災害対策係職員、加藤絵里、夜宮沙耶。
会議室に集まった面々の前には、何束もの報告書、資料、地図等が広げられている。
議題は一つ。香月フブキが調査していた鬼憑きとそれにまつわる現象の整理だ。
沈黙が続く会議室の中で岸が事件の整理を申し出た。分析官としての能力が発揮されるときというわけだ。
「香月の話を時系列順に整理しなおしてみた。起点は、二月正『陽波高校七不思議』だ。この本は、陽波高校が旧校舎から新校舎へと切り替わる際に、当時の文芸部の部員が作成したと思われる小説だ。
 こいつに記載されている怪異が当時発生していたのか、それは記録がないので確かめようがない。ただ、昔から狂い桜の噂はあった。それでいいよな、香月」
 香月は頷いた。彼女が現在所属している新聞部の取材に、教員は狂い桜の噂が古くからあったことを示唆していた。ただし、その噂はあくまで狂い咲きに関するものであり、願いが叶うということはなかった。
「変異性災害対策係が陽波高校周辺での異変を感知したのが今年の初めごろ。香月が陽波高校周辺で、何名かの鬼憑きを見つけたのが最初だ」
「その鬼憑きの部屋には狂い桜の満開になった写真があったんだよね」
「そうだ。陽波高校の校庭に生えている咲かない桜。それが満開になった写真が置かれていた。ちなみに鬼憑きには、一様に奇妙な鳴き声を発すること、身体能力の向上、記憶の消失の三つの症状がみられるほか、目立った特徴はない。祓ってしまうと、記憶が欠落し、検査の結果は皆一様に精神汚染の兆候なし。今まで現れた鬼憑きはデータ上宿主ではない」
 鬼という呼称自体、香月がつけた仮称だ。この名前は本質を表さない。
「さて、桜の写真をヒントに、香月が陽波高校に潜入したのが四月。その後、二週間ほどで、理科室の窓ガラスが割れるという事件が起きる」
 ちょうど、香月が写真部に入部し、結城辰巳の娘、結城美奈と共に心霊写真の撮影をしたころだ。ガラスが割れた理由はわからないが、そのガラスは、七不思議のひとつ、『自殺した高校生が貼りついている』といういわくつきの窓ガラスだ。
 夜宮は手元の資料を改めて確認する。陽波高校が新校舎になってから、校舎内で飛び降り自殺は発生していない。この噂のモデルになる事件は存在しない。
「その後、陽波高校新聞部は、願いをかなえる一夜桜の噂の真偽調査を始める。だが、結果、桜は咲かず、うわさの真偽は確認できなかった。当日、現地に同行した香月も怪異の気配は感知できなかった。特定の怪異が出現した確率は低い」
 調査は事実上ここで暗礁に乗り上げる。その後、校内に出現する鬼憑きや鬼憑きとなった学生たちの身辺調査を進めるも、有力な手掛かりは見つからない。
 また、新聞部の生徒、佐久間ミツルは迷い家事件に巻き込まれ失踪。鬼憑きたちとは別に、怪異の影響を受けた生徒、大森優香の出現。陽波高校内で起きている異変は、徐々に規模を拡大しているように見える。
「でも、一方で状況は何ら変化していないとも言えるよね。陽波に潜んでいる何かはあくまで鬼憑きを発生させるだけ。大森優香がイレギュラー」
 ちせの意見に加藤が頷く。だが、夜宮には何かが引っかかる。
「ホワイトボードの写真は狂い桜なんですよね。銀色の花が咲いているのはいったい」
「これは今日、香月が倉橋守という生徒から受け取った携帯の画像だ。撮影日は香月たちが桜を確認に行った日、撮影場所は陽波高校校庭内。もっとも、この花が咲いていたのは倉橋守の携帯端末の中だけだ」
 端末の中だけ? 会議室の全員が首を傾げた。
「こいつは、枯れ木である狂い桜に銀色の花の画像をかぶせて作られた写真だ。拡張現実、ARを使用してね。倉橋守と、他の鬼憑きの端末にはいずれも同じネットワークスペースのリンクへのアクセス記録があった。そのスペースでは画像を加工するサービスをしている。
 そのサービスの中に、狂い桜の画像も登録されていた。登録者名は二月正。陽波高校七不思議の著作者と同じ名前だ」
 報告を終えた岸がレポートを机に置いた。
 岸の説明を聞いて、夜宮は一つのイメージを持っていた。手に取った二月正の「陽波高校七不思議」を再度開く。思い出すのは、風見山の事件だ。
「今回の件は怪異の宿主を探すために行われているのではないかと思います」
 風見山の迷い家。風見山で発生したその怪異は、ウサギ頭の男たちによって人為的に作られた怪異だというのが、秋山の見立てだ。
 夜宮も彼の見解に異論はない。ただ一つの疑問はどうやって怪異を作りだすことができるかということだ。怪異は宿主の心に憑く。土地に由来する怪異、呪物を媒介に発言する怪異、どんな怪異であっても宿主がいなければ現実への干渉ができない。
「もし、私が、意図的に怪異を作ろうとしたとき、初めに当たる壁は、作ろうと思う怪異と適合する宿主をどのように探すのかという点」
 方法はいくつか思いつかないわけではない。一番簡単なのは、宿見家において宿見香代が行った方法だ。何らかの方法で、呪物を人間に使用させる。呪物との相性が良ければ、その人間は宿主になる。
 使い方が不適切なら力は発現しないし、相性が悪ければ怪異は生まれないだろう。
「夜宮。その方法には致命的な問題がある。呪物がどんな人間でも呑むほどに強い、『虎の衣』のようなものであれば、まだいい。だがそうでないならば、当たりを引くまで呪物を当て続けなければならない。くじ運が悪ければ、怪異が生まれる前にウチが気づく」
 岸の指摘の通りだ。だから、風見山の事件で、彼らは別のアプローチを取った。別の方法で候補者を絞り込んでいく。霊感の高い人間を選別するのだ。
「迷い家のシステムに気が付ける人間は、くろくろ様の意味を追えるほどに呪術や怪異について知っている者、もしくは気づくかどうかに関わらず霊感がある者に限られた。それ以外の一般の人には、子供たちがやっている遊びが意味するものはわからない。
 彼らはそうやって、迷い家に入り込む人間を絞り込めるようにした。そして、宿主になりうる人間を厳選し、迷い家に送り込んでいた」
 四人は夜宮の意見に対してなんら反応を見せない。夜宮はそれが肯定を意味すると判断し、先を続けた。
「私には、陽波高校で起きていることも同じように見えます。桜の写真、七不思議。AR技術を公開していた二月正という人物は、これらのツールを使って、怪異の宿主を探している。
香月さんが直感的に何かが起きていることを感じることができても、怪異を見つけ出すことができなかったのは、まだ怪異が生まれていないからではないでしょうか」
 そう、二月正は、陽波高校にて宿主を探しているのだ。

―――――――――

次回 黒猫堂怪奇絵巻6 ネガイカナヘバ5

その他 短編
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[感想の掲載について]
 初めまして。総合文芸企画集団「Text-Revolutions」の代表、御拗小太郎です。
貴サークル発行の「黒猫堂怪奇絵巻」の感想文が投稿されており、
この感想を私が主催するイベント「第3回Text-Revolutions」あわせの
ねこなび2016(同人誌の感想を集めた本)に掲載したいのですが、
その許可をいただきたくご連絡致しました。
当方で簡単なチェックを行い、掲載されておりますので是非一度ご確認いただければ幸いです。

 本に対するネガティブな表現がないことは当方でも確認しておりますが、
もしも発行の意図や本の頒布などに対して誤解・弊害が生じるような表現がございましたら、
取り下げもしくは改訂を検討させていただきますので、その際はお手数ですが
このメールアドレスまでご返信くださいますようにお願いいたします。
感想は以下のリンクとなります。

http://text-revolutions.com/event/archives/2930

 末筆ではありますが、貴サークルの今後のご活躍を心よりお祈りしています。

Text-Revolutions 代表
御拗小太郎
** 2016/03/01 01:22 (御拗小太郎)
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プロフィール
HN:
若草八雲
年齢:
37
性別:
非公開
誕生日:
1986/09/15
職業:
××××
趣味:
読書とか創作とか
自己紹介:
色んなところで見かける人もいるかもしれませんがあまり気にせず。
ブログとか作ってみたけれど続くかどうかがわからないので、暇な人だけ見ればいいような。
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