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作成した小説を保管・公開しているブログです。 現在は連作短編が二篇の他,短編小説,エッセイの類を掲載しています。 連作小説の更新ペースは随時。二か月に三回を最低ラインとして目指しています。
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不思議の国3
創作界隈の人たちのいう「短編」ってどれくらいなのだろう
というのが、長年の謎です。
怪談集とかにある、見開き一ページが短編なのは間違いないのだけれど、長くしてどこまでなら短編と呼ばれるのかというところの線引きが難しいなと思います。
短いほうが読みやすくていいんだぜ!という大学時代の後輩の言葉はある側面で正しいと思うところですが、個人的には「そこそこ読んだ感があってかつ長くない」という分量を求めてしまいがち。
後輩は短編集しか読まない子だったのに対して、私はハヤカワSF文庫の長編(ジュラシック・パークとか失われた黄金都市とか)を愛していたようなところもあるし、読書経験と、書く文章の長さというのは影響しあうのかもしれないなあ。
ーーーーーーーーーー

 ガラスの向こうでは遺体が安置されている。地方の小さな病院ではあるが、解剖室はそれなりに大きい。先ほどまで歩いてきた院内の設備と比べると、明らかに設備が整っており、新しい。
 いやはや、予算の振り分けを誤っているのではないか。自分の仕事のしやすさを棚に上げて、鷲家口眠は院内の案内を引き受けてくれた事務長の顔を見た。
死人に金をかけるより、生きている人間に金をかけるべきだ。特に病理解剖に力を割けるわけでもないのであればなおさら。
事務長が部屋を退室してしばらくすると、地元の警察と、院長が顔を出した。警官は見覚えがある。遺体発見現場で顔を合わせたうちの一人だろう。
「急いできたつもりでしたが、先生のほうが早かったようです。すみません」
 警官は、そう言って眠に向かって頭を下げた。院長は後ろに立って、眠を値踏みするように視線を走らせている。自分でも同じことをするが、やられる方は気分が悪い。
 まあ、変わった事件を聞きつけて、人の仕事場を荒らしに来ているのだ。院長がそのような視線を走らせるのも理解できなくはないが。


 鷲家口眠は検視官を生業にしている。人間と顔を合わせるのが嫌でこの仕事を選んだ。しかし、死体もまた人間だ。死体と毎日顔を合わせて、その死因を確かめているうちに、眠は死体に会うのすら嫌気がさしてきた。
 加えて面倒なのが、彼の横に立ち、ぺらぺらと話を続けている警察だ。警察というのは、自力で犯人にたどり着くために知恵を絞るのだと思っていたが、思った以上にこちらにかける期待が大きい。死因は何か、凶器は何か、犯人に繋がる手掛かりはないか。
 解剖の度に尋ねられるうちに、眠はすっかり警察のことが嫌いになってしまった。今では隣で話している話の三分の一も聞く気が起きない。
「それで、ですね。問題の遺体があちらなのですが。あの、先生はこの事件、どのように見ていらっしゃるのでしょうか」
 どのように。と尋ねられても、ガラスの向こうの遺体と対面したのはこれが二回目で、本格的な解剖などしていない。たまたま街を訪れた直後にあの遺体と顔を合わせただけの検視官に、具体的なことなど何もわかるはずがない。
 ただ、強いて言えば
「遺体の状態よりも、あの手足のガラスが一番の謎だと思いますよ」
 隣の警察官がはっと息を呑むのがわかった。なぜそこで。と眠は疑問に思う。あの遺体をみた人間は、素人だろうが玄人だろうが、必ずその部分に注目するだろう。
 検死台におかれた遺体は左半身しか見えない。だが、その異常は既に顕著に表れている。左手の先から腕にかけての部分は、人間の肉とは思えないほど透き通り、輝いている。
 彼の脚もそうだ。ひざ丈から上について、同じ異常ができている。あれは、遠くで見る限り人の身体というより、ガラス細工だ。
「両手両足をガラス細工と置き換えるなんて、奇妙な話じゃないか。この町で、彼の両手・両脚のように、人間を象ったガラス細工を扱っている工房というのはあるのですか」
 眠の問いに先ほどまで饒舌だった警察が沈黙した。男の顔からは表情が抜け落ちており、瞳の奥が昏い。肌から血の気が引いていき、陶器のような質感に変化していく。
ごきゅ。
 警官の喉から妙な音が響くと、男の瞳には焦点が戻り、顔全体に血が巡りはじめる。それと共に、警官の顔に表情が戻ってきた。
「はて。私もガラス細工にはそれほど詳しくはありませんが、観光用のお店の中には、ああいった人の手足のような彫刻を売っているお店はありませんな」
 警官はガラスの向こうの遺体を見つめ、あったかなあ。人の彫刻、うーん、彫刻職人の方を当たってみるべきかと独り言を津美焼きながら、手帳にメモを取る。
「すぐに捜査してほしいという話ではないです。あの手足のようなガラス細工を作るのにはそれ相応の技術が必要だと思ったので口にしてみただけで」
「なるほど。確かに、まるで本物の人間の手足みたいですからねぇ。では、そちらの方は私たちの方で調べておくことにいたします。どうでしょうか、あと先生の方で今気になることはございますか」
 さっきの妙な間と、喉の音について尋ねたいと思ったが、警官はそんな間などなかったかのように振る舞っている。前失で延々と話を続けていると、院長の視線も痛い。
 現段階ではこのあたりにとどめて、まずは解剖をしてみよう。眠は、警官に丁寧に礼をいい、院長に解剖室に入りたい旨を申し出た。

 死因は腹部損傷からの大量出血による失血死。腹部の損傷は、棒状の物体が貫通した痕だ。鉄パイプが刺さっていたという第一発見者の証言と合致する。筋肉の損傷からみると、先端は尖らせてあり、おそらく槍のような形状をしていたのだろう。
 この遺体は、何者かに砥いだ鉄パイプで一突きされて死亡した。その死因だけ見れば、わざわざ遠方から訪れて解剖をさせてもらう理由はない。
 だが、この遺体の一番の特質は手両足のガラス細工だ。いずれのガラス細工も、遺体の両手両足に向かって幾重にも根を伸ばしており、遺体の切り口はそれらの枝にと複雑に絡み合っていた。
 この根が、ガラス細工と死体を強固に結びつけている。ちょっとやそっと動かしてもガラス細工は腕から取れない。第一発見者が混乱した通報をしてきたのも頷ける。
 しかし、このガラス細工は何なのだろうか。手に絡みついているガラスを取り外して観察してみれば見るほど、精巧なつくりをしている。遺体に貼っていた根も、いずれも遺体の血管と一致する。要するに、この根は、血管なのだ。

 ガラス化した人間の死体が見つかった。眠の下に持ちかけられた奇妙な相談を思い出す。宛先人不明のメールには、人間がガラスと化すという奇妙な現象の記載と、その謎を解いてほしいという簡潔な依頼、そして、破格の報酬額だけが記載されていた。

 報酬の金額と、名前のないメールから、おおよそ悪戯だろうと思っていたが、おそらくメールが言うガラス化した人間というのはこれのことだったのだろう。
 だが、眠の持っている知識の中に、人間をガラス化する方法はない。
 手足のガラス化に関する結論を出すことなく、解剖所見からわかる死因だけをまとめて解剖室を出た。所見を話したときに警察官の肩の力が抜けていくのが妙に印象に残った。

*****

 刻無館長は、終始、鷲家口眠の仮説は見解の相違であるとして取り合わなかった。眠は同行した水鏡紅と共に、資料館を後にした。
 あの奇妙な遺体を初めて見て四日。問題の遺体以外に似たようなケースがないか警察に問い合わせを続けているが、該当する事例の連絡はない。他に何か情報はないかと街を歩いてみたが、職人街には人間を模倣したガラス細工を扱うような職人はいなかった。
 資料館にあったガラス細工と先住民の宗教の記述は、そうした眠の行き詰まりを解消するものに思えた。だが、刻無の様子では、あの資料館に通ってもこれ以上手がかりは掴めそうにない。
「これで手がかりなしに逆戻りか」
 思わず落胆の声を上げてしまい、隣を歩く水鏡が驚いてこちらを見た。
「やっぱり、鷲家口さんは何か探してあの資料館に来ていたんですか」
 どうやら、水鏡は眠の様子をみて、眠が単に親切心で自分に声をかけたわけではないことに気が付いていたらしい。眠は、なんだか恥ずかしくなってしまい、詫びに食事でもどうだと彼女を誘った。
 駅前のビジネスホテルに宿泊しているというので、食事は駅前の海鮮料理屋にした。
 水鏡は連れがいるので、呼んでくると言っていたが、個室にやうかしぎってきたのは彼女一人だ。
「ホテルの部屋にはまだ戻っていなくて、別の調べものを済ませてから来るって」
 そう言って、彼女は目の前に並んだエビのホイル焼きと魚の香草焼きに目を輝かせた。視線で食べてよいと伝えると、彼女はとても美味しそうにそれらの食べ物を頬張った。
 彼女が連れを呼んだ理由は十中八九、眠が資料館を訪れた理由を聞くためだろう。隠し立てする理由もないので、話そうと口を開いた。
ところが、水鏡は、先に自分たちのことを話すと言う。
「ほら、どちらにせよ、連れが来たら同じ話をすることになるだろうから」

 篠崎ソラが踊るガラス細工の噂について調べ始めたのは三月程前だという。いつもの取材で、町のおいしい飲食店を探しているときに、ある店で聞いた噂話だという。
彼女に噂話を教えたのは、全国を旅行して歩いているとある大学生だ。彼は、港町を訪れたとき、ガラス細工の職人たちから、不思議な技術の話を聞いた。
港町以外でも、ガラス細工は多く作られているが、この港町のガラス細工は一味違う。それは、先住民の宗教的な象徴として作られていた技術が進歩したものだという。
学生が見てきた工房でのガラス細工には、そのような特殊な細工はなかったものだから、学生は職人たちに、どこがそれほど特殊なのかと尋ねた。
そのとき、職人の一人が話したのが、ガラス細工が動く技術だったという。
「正確には、ガラス細工の作成過程には技術的な差はないのだけど、港町で作られるガラス細工の中には、動くものがあるという話だった」
 動くもの。具体的にどのように動くのかについては職人は話さなかった。ただ、動くガラス細工にはいくつか特徴的な部分があったという。
「と、私たちが聞いた噂はそこまで。私の連れに真偽判断を依頼した、篠崎さんも何度も訪れたそうですが、これ以上はわからなかった」
 なるほど、水鏡は、動くガラス細工について、歴史的な側面から情報を集めようと思い、資料館に足を運んだわけだ。ならば、連れの方は職人街へと足を運んでいるのだろう。
 連れの話を少し聞こうと思ったときだ。タイミングよく、眠と水鏡のところに一人の青年が顔を出した。青年は、水鏡を、正確には彼女の食べ終わった皿の量をみて、驚き、眠に向かって深々と頭を下げた。
 彼は、久住音葉と名乗った。水鏡がすでに話した事情を大まかに彼に伝えると、彼は再度、眠に向かって深く頭を下げた。
「見ず知らずの人に、こんな奇妙な話に付き合ってもらって本当にすみません」
 そういって頭を下げる青年に、眠はこちらこそ悪かったと謝った。目を丸くして眠の顔をみた彼に、水鏡との資料館でのいきさつを話してやる。
 眠は、久住もだいたいの事情が把握できたところで、二人の顔をみて、問いかけた。
「乗り掛かった舟だ。僕は君たちの調べ物について、可能な限り調査に協力しようと思う。けれども、君たちは僕の事情を知らない。水鏡君はさっき、僕が何を調査しているのか気にかけていたけれども、今までの話を聞いて、久住君は、僕が何を調査しているのか興味があるかい?」
 ずるい聞き方だなと思う。彼が港町にやってきた事情を聴けば、こういう尋ね方で、彼の興味を惹けるという打算がある。案の定、久住音葉は話に乗ってきた。
 だが、どんな尋ね方をしたといえど、話を聞きたいと言ったのは彼らだ。眠は、彼らの意思を尊重して、自分が見てきた奇妙な遺体の話と、彼らの求める動くガラス細工のつながりについて話をするに過ぎない。
「僕はね、この港町に来てから二つ、ガラス化する死体を見ているんだ」

*****
 眠が新たな遺体に出会ったのは、病院で、件の奇妙な遺体の検視を終えた翌日のことだ。検視を行った夜、警察署の署長と面談する機会を持ちたいと電話があった。
 電話の指示に従って、夜の街に繰り出すと、指定場所はどうにも眠の手持ちでは賄いきれないようなメニューを扱っている料亭だった。このような港町にも、高級料亭などというものがあるのだと、仲居に連れられて廊下を歩きながら冷汗をかいた。
 いずれにせよ、呼ばれたのは眠なのだ。代金は一円たりとも支払わないと、どうでもよい覚悟が決まったのは署長が待つ部屋に通されたときだ。
「やあ、君が鷲家口先生か」
 眠を迎えたのは、港町を管轄する警察署の署長と、副所長、そして眠に今回の件について相談をした等々力(トトロキ)という刑事だった。等々力は二〇代前半だというのに薄くなり、頭皮が見えてしまっている頭を撫でながら、眠に小さく頭を下げた。
 どうやら、等々力に会う前に、件の遺体を検死してしまったがゆえに、事が大きくなったらしい。等々力は元々根回しが得意な方ではないため、町の問題に出向組が妙な輩を投入したという話になってしまったらしい。
 ああ、話忘れていたが、等々力というのはこの町の警官じゃない。別件の捜査で本庁から出向してきている、階級で行けば副署長よりも上の立場にあるエリートだ。彼は、今回のガラス化死体のように、奇妙な死体を見つけるたびに、眠を頼って連絡をしてくる。
「僕が勤めている病院を抜け出て方々に出張する理由の八割か、九割が等々力の依頼なんだ。どうにも、彼も奇妙な事件に縁が深いようでね」
 署長との会談に話を戻そう。だいたい予想が付いている通り、眠がこの場に呼ばれた理由は、町の外の者がむやみに捜査に口を出すなと、遠回しに釘を刺すためだ。
 だが、署長や副署長もまた、例のガラス化死体については、捜査方針を決めかねていたらしい。というのも、眠が見つけた死体は、三件目だったからだ。
「三件。それより前に、二件も、さっき話したような遺体が見つかっているんですか」
「ああ、そうだ。それぞれにガラス化している部位は異なる。まあ、あれをガラス化と呼んでいいのかどうか、という部分は意見が分かれるけれどもね」
 そもそも人間の身体はガラス状に変化することはない。少なくとも、眠はそういった技術を知らない。
 いずれにせよ、署長たちは、外部の目を嫌がると同時に、外部の目から見た所見も欲しがった。この町にも検視官はいるはずと尋ねると、奇妙なことに署長たちは街の者を当てにできないと首を振った。
「僕も初めてガラス化死体を見た時に感じていたのだが、どうにも、この町の警察関係者は、件の死体に関する捜査に消極的らしい。捜査をしないというわけではない。ただ、いずれの死体も単なる事故死だと言って、早々に事件を畳もうとしている」
「捜査のことはよくわからないのですが、事故、ではないのですか」
 久住の疑問に対する答え、真実を眠は持っていない。寧ろ、署長から提示された三件の捜査資料を見る限りならば、眠にはどれも事故死にしかみえない。
 一人目は二月前、ビルの点検に来た点検業者であり、たまたま腐食していた柵にぶつかって、転落した。地面にたたきつけられた下半身がガラス状になっており、両脚と腰部分の大半が砕け散った。
 二人目は交通事故にあった地元の漁師だ。夜半に外を歩いていたところ、車道に飛び出た瞬間、長距離輸送のトラックに衝突した。彼は右腕と背中がガラス化しており、右腕は完全に砕け散り、背中には何本ものひびが入っていた。眠が会談の後に見ることになったのはこの死体だ。
 そして、三人目。眠が港町を訪れた日に港の倉庫で働いていた作業員だ。作業中にバランスを崩して倒れたところ、飛び出ていた鉄パイプで腹部を損傷した。両手両足がガラス化していた。
「状況だけをみれば、おそらくどれも事故死だろう。どの死体も、身体の一部がガラス化している、その一点だけが謎として残っているだけだ」
 ただ、その謎は放置して事件処理をしていいものとも思えない。署長たちはそう思って、眠の意見を参考にしたいというわけだ。
 署長の話に乗っかる形で、眠は二件目の死体の検視を行った。しかし、これといって目新しい発見はない。
「ただね、あの死体、ガラス化したと見ると合点がいくようにも思うんだ」
 二件目の遺体は肩甲骨から腰にかけて、背中の筋肉がガラス化していた。ガラス自体には幾重にもひびが入っているから中身は見えないが、おそらくひびが入らなければ彼の臓器が動く様子が見えただろう。ガラスは周囲の皮膚と癒着しており、外そうと思えば、彼の背中全体の肉も含めてはぎとらなければならない。
「両手両足のような部分であれば、死体を切断して別の彫刻を取り付けることは可能だ。けれども、あの背中でも同じことをするのは相当困難だと思う。なにより、そんなことをしているうちに、本人が死んでしまう。事故に遭う前に彼は死体になるはずだ」
 あまりに奇妙な死体で、眠の頭は混乱していた。そこで、とりあえずガラス細工についての知見を得ようと思い、訪れた資料館で水鏡と出会ったというわけだ。

*****
 鷲家口眠という男は、自分のことを検視官と名乗った。水鏡がどういう経緯で彼と知り合ったのか、彼がどうして水鏡に興味を持ったのか、その辺りが今一つわからないが、眠の持っている資料は興味深いものだった。
 ガラス化していく人間の死体。それは、動くガラス細工の噂の裏返しだ。
 音葉は職人街で手に入れた、ペンギンのガラス細工を机の上に置いた。
「わあ、かわいい」
 水鏡が手に取る前に、鷲家口が置物に手を伸ばした。彼は、少し触れて小さく声をあげた。
「こいつは、ガラス細工なのか。木工かと思った」
「僕もそう思って手に取ったらガラス細工で面白いなと思って買いました。今、鷲家口さんの話を聞いて、改めて買ってきてよかったと思いました」
 篠崎ソラ曰く、動くガラス細工は、特殊な技術により作られており稼働式の細工である、そしてその細工には人型のものがある。
 音葉は、その二つの情報から、てっきりガラスで透き通った人型の細工が動くものだとばかり思っていた。けれども、机上にある細工のように、表面は別途加工されている細工もあるのだ。
「君は、面白いことを考えるね、久住君。これを買ってよかった、ということはつまり」
「ガラス化した死体も、動くガラス細工も同じように、ガラス部分は皮膚らしく塗装され隠されている」
 鷲家口眠が発見したのはたまたま皮膚がはがれた者に過ぎないのだとしたら。人間の身体は動く。ガラス細工というのは、一部がガラス化した人間かもしれない。
「でもそれじゃあ」
 そう。仮にその通りだとすれば、鷲家口が見た死体は、死ぬ前はそのまま動いていたことになる。ガラス細工の部分も含めて。
 鷲家口は興味深そうな目で音葉と水鏡を見た。
「僕はね、君たちみたいな突飛な考え方は嫌いではない。けれども、まだ情報が足りない。久住君の話しているのはあくまで仮説にすぎない」
 だから、支持できない?
「いいや、そうじゃない。仮説を裏付けるための情報をもっと収集するべきだという話さ」
 まあ、それよりもまず、もう一つ。君が聞いた「裏路地」の話を聞かせてくれ。鷲家口はそう言って、追加の酒を注文した。

ーーーーーーーーーー
不思議の国はここで折り返し地点。
初期のプロットではもっとたくさん書くことがあったので、
だいぶん 駆け足に話を進めています。
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プロフィール
HN:
若草八雲
年齢:
37
性別:
非公開
誕生日:
1986/09/15
職業:
××××
趣味:
読書とか創作とか
自己紹介:
色んなところで見かける人もいるかもしれませんがあまり気にせず。
ブログとか作ってみたけれど続くかどうかがわからないので、暇な人だけ見ればいいような。
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