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作成した小説を保管・公開しているブログです。 現在は連作短編が二篇の他,短編小説,エッセイの類を掲載しています。 連作小説の更新ペースは随時。二か月に三回を最低ラインとして目指しています。
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キルロイ1
連作短編,黒猫堂怪奇絵巻の5話目に当たります「キルロイ」の掲載一回目です。
前回までの物語の中心であった風見山から大きく変わり,今回の舞台は学校になります。

続きを書くのが2ヶ月近くあいてしまったので,雰囲気を思いだすのに力を費やさなければならないのが,まだまだ技量が足りない証拠なのかなあなどと思う毎日です。


今までの黒猫堂怪奇絵巻
黒猫堂怪奇絵巻1 煙々羅
黒猫堂怪奇絵巻2 虎の衣を駆る
黒猫堂怪奇絵巻3 とおりゃんせ
黒猫堂怪奇絵巻4 迷い家
黒猫堂怪奇絵巻4.5 薄闇は隣で嗤う

―――――――
黒猫堂怪奇絵巻5 キルロイ

1 
ひとつ 理科室の右から3枚目の窓には飛び降り自殺をした男子生徒が貼りついている
――私立陽波高校七不思議



「七つないなら七不思議じゃないんじゃないの」
 ホワイトボードに書きだされた学校の七不思議。企画の説明をする部長に比べ、ホワイトボードを眺める部員たちからはやる気が感じられない。
 高校生にもなってこういう話に乗る人間は少ないだろうし、ましてや新聞部のような部活で盛り上がるネタでもないのだろう。東奔西走、怪奇現象を求めて駆け回る新聞部なんて存在は一昔前の小説の中だけにしかいないのだ。部員が思い付きで述べた疑問も窓から外へと飛んで行き、誰も受け止めてくれやしない。
「ねぇ、この雰囲気はどうしたらいいのかな」
 隣に座る結城美奈が、私の肩をつついて小声で話しかけてくる。
「私に言わないでよ。だいたい、こういう時、写真部としてはどうしてたの」
「わかんないよ。先輩達にとりあえず仕事の内容聞いてこいとしか言われなかったもの」
 困った。新聞部部長の渾身のネタが部員の間でから回るなか、写真を撮るために呼ばれた結城美奈と、私、上月桜には場が収まるのを待つ以外の選択肢がない。
「とりあえず、話が終わるの待とうか」
 結城美奈が隣でがっくり肩を落とした。

*******

 私立陽波高校は、巻目市内の数少ない私立高校だ。
 学生服が可愛いという理由だけで、女子からの人気が高い。
 そんな理由では入学後には先が残らない学生生活が待っていそうなものである。けれども、生徒たちは、三年かけて教師に叩かれて、卒業時には立派に進学していく。入学してから調べてみて驚いたのだが、陽波高校の進学率は市内トップである。
 高校内では部活動も盛んに行われており、上月桜が所属している写真部などは、イベントのたびに他の部活から撮影を頼まれ、それによって部費を賄っている。
 今回の新聞部からの撮影依頼も、部費獲得活動の一環であり、また新入部員である上月の実践練習を兼ねたものだと聞かされていた。

 とはいえ。

「どうしようもないでしょ。いくら待ったって心霊写真なんて撮れっこないって」
 放課後の理科室を開けてもらい、窓ガラスの前に三脚を立てて二〇分。後輩指導係という役を振られて気合十分だったはずの美奈は、早くも根を上げ始めていた。
「さくらー。これは引き受けなくていい話だったんじゃないかなー」
「部費のため、なんとしても写真撮影をしろって部長の命令だったんでしょ?」
「それはそうだけど、心霊写真だよ? 私たちの仕事じゃないよー」
「まあ、気長に待っていれば一枚くらいは不思議なの撮れるかもしれないじゃない」
 横でうだうだしている美奈を放置して、桜はカメラのシャッターを押した。多分、窓の向こうを飛んでいた鳥くらいなら映っていたと思う。
「カメラの練習なんだから、風景写真だと思って撮影すればいいかなって」
 どの道、今使っているのはデジタルカメラだ。幸いなことに無駄な写真を何枚とってもフィルム代がかさむことはない。
「でもなんか意外だなあ」
「意外?」
「そう。さくらってこういうのんびりしたっていうかだるい? 仕事は嫌いなんじゃないかって思ってたからさー。写真部に誘ったときだって、じっと被写体を待たなきゃいけないのは嫌とか色々話してくれたじゃない」
 人間は変われば変わるもんってことなのかな。美奈はカメラを構えて座っている桜を不思議そうに見つめた。
「こういう気分の時もあるの」
「ふーん」
 美奈が両手でカメラのファインダーを作り、ファインダー越しに桜の顔を捕える。
「友人の新たな一面発見ってことかな」

*******

 上月桜。今年の4月に陽波高校に転入してきた同級生である。
 線が細くて可愛らしい女の子なのだが、転校初日に男子生徒を二人放り投げたので、男子生徒からは畏れられている。
 あの時、私、結城美奈は遅刻寸前で慌てて学校に向かっていた。正門を抜けてどうにか遅刻は免れそうと気を緩めたとき、隣のクラスの男性生徒が荒っぽい声をあげているのが耳に入った。
 朝から元気だなー程度の認識だったが、正面玄関前で彼らが絡んでいるのが見慣れない制服の女子で、私は思わず立ち止った。
 彼らが桜に何を話していたのか、桜は今でも教えてくれない。とにかくあの男子たちは苛立ちを隠すことなく彼女にぶつけようとした。だが、その拳は桜の腕によって軽々と払いのけられ地に組み伏せられた。その間、おおよそ3秒。
 周りにいた遅刻寸前の生徒たちや、窓からその様子を眺めていた教員の全員が、何が起きたのかわからなくて固まったと思う。
 もっとも、何事もなかったかのように職員室に向かい、担任に連れられて元気に挨拶をする上月桜を見た、私たちクラスメイトは戸惑うどころの騒ぎではなかったのだけれども。
「お。写真部の活動頑張っているね、上月君」
 私たちは、結局1時間半くらいねばったところで、一応義理は果たしただろうと理科室から退却した。部室に物を置いて帰宅しようかと思っていたら、部屋の前に胴着姿の大森先輩が立っていた。
 大森先輩の顔を見て、桜は私の背中を軽く叩いた。先に行ってくれという合図だ。私は少し気になって桜の顔色を窺ったけれど、彼女は私に笑いかけるだけだ。
「こんにちは、大森先輩。また勧誘ですか?」
 そして、いつもの明るい調子で大森先輩に挨拶をする。私は、桜に促されて部室の中へと機材を置きに行った。
 大森優香。陽波高校剣道部の女子主将。男子地区大会優勝者ですら軽々と伸してしまう実力者だが、この地区では剣道部の大会に女子が出ることが叶わない為、公式の成績はない。但し、この二年、我が校の剣道部の成績が良いのは、彼女が後輩たちに稽古をつけているためだ。
 大森先輩が桜に声をかけているのは、彼女もまた転校同日の桜の姿を見かけているからだ。桜の体術を見て惚れ込んだというのがもっぱらの噂である。
「まったくさくらはモテモテだなー」
 三脚を畳み、撮影したカメラの画像をチェックする。
 何枚取ったところで心霊写真など映りっこない。そこにあるのは何の変哲もない窓の写真だ。
「あっ」
 画像をスライドさせていく美奈の手が止まった。その様子を悟られていないか、思わず背後を振り返る。桜はまだ部屋の外にいるらしい。部室の中には誰もいない。
「これはやばいよね……」
 息を整えて、もう一度表示された画像を見る。心霊現象は一瞬だけ起きるのかもしれないと言いだした桜がコマ送りで撮影した窓の風景の一枚だ。そこには窓の外に両手で貼りついている高校生が映りこんでいた。頭部を下にして必死の形相で教室内を見つめている。
 念のため手前と次の画像を確認しても高校生はいない。そもそも写真を撮影していた時にそんな物を見た記憶もない。つまり、桜は心霊写真を撮影したのだ。
 この写真をどうするべきだろうか。新聞部に届ける? いや、それは良くないような気がする。できることなら、この写真を消してしまうべきだろう。
 しかし……消した後に起きるかもしれない出来事を想像して、美奈は小さく震えた。
 あまり、むやみに手を出すべきではない。まずは、わかる人に相談しよう。
 美奈は携帯端末を開き、知り合いの電話番号を入力した。

*******

 秋山恭輔。彼と知り合ったのは父の仕事がきっかけだ。
 結城美奈の父親、結城辰巳は、巻目市の警察署にて働いている、いわゆる刑事である。
 一介の刑事でしかない美奈の父が、これまた一介の大学生に過ぎない秋山恭輔と知り合いなのは、秋山恭輔が抱える特殊な事情によるものなのだと、美奈は父から聞いている。
 実際に、美奈自身も秋山恭輔が特殊な事はよく知っている。だから、今回もこうやって家の近所のファミリーレストランで、秋山の事を待っているのだ。
 美奈がドリンクバーのドリンクを三回おかわりしたところで、ファミレスの入り口に秋山が現れた。彼は店内を見回し、美奈を見つけあくびをしながら近づいてきた。
「恭輔君、また夜更かししてたの」
「呼びつけておいて、開口一番はそれか……昨日は仕事が詰まっていてあんまり眠れてないんだ」
「仕事って、変異性」
「しっ。それはあまり口外しないって約束、暫く会わないうちに忘れちゃったのかい」
「んー覚えてる。でも、最近はウチにもあんまり遊びに来ないから、ちょっと意地悪しようと思って。お父さんも、久しくあってないから心配って言ってたよ?」
「大丈夫。辰巳さんには昨日の仕事先で会った」
「うそ、そうなんだ。じゃあ、昨日お父さん遅かったのって」
「そういうこと。そろそろ席に座らないか。今日は相談ごとなんだろう」
 秋山はそう言って、美奈の鞄が置かれた窓際の端の席へと向かった。美奈はクリームソーダを手に持って慌てて彼の後を追いかける。
 秋山は席について早速オーダーを済ませ、出てきたポテトグラタンをつまみ、ドリンクバーからとってきたお茶を片手に美奈の話を聞き始めた。
 一通り話を聞いた後、彼は美奈が持ってきたデジカメの画像をじっくりと見つめた。
「つまり、写真部の活動の一環で撮影した学校の七不思議のひとつが実際に撮れてしまってどうしたらいいかという話なんだね」
「そう。窓の外に張りついた高校生なんて、私は見なかったし、そもそもそんなのいるわけないじゃない」
 普段なら、秋山は一通り頷きながら心霊写真についての解説でもしてくれるところなのだが、美奈の声に反応しない。彼はデジカメの画面を操作しながらじっと考え込んでいる。
「ねえ、恭輔……? 何か、危ないものなの、それ」
 耐えかねた美奈の声に彼は顔を上げ、美奈の目をじっと見つめた。何も言わずただじっと彼女を見つめる秋山に、美奈は、何故だか急に怖さを感じた。まるで、彼の瞳が美奈の中の何かを踏み荒らしていくような圧迫感を感じて、目を逸らしたかった。けれども、どうしても秋山の眼から視線を外すことができない。外してしまったら最後、美奈はちょっと前までの美奈ではなくなってしまうのではないか。そんな気がしたのだ。
「いや、危ないかどうかはわからないな」
 秋山が声を発するまで、5秒も満たなかっただろう。けれど、美奈には彼の視線に晒されていたのがとても長い時間に思えて、思わず大きく息をついてしまう。椅子にもたれかかると、背中にひんやりとした感触があり、美奈は自分が冷や汗をかいていたことに気がついた。
 もっとも、秋山はといえば、その様子を、彼女が安心したのだと捉えたのか、あまり心配するような様子も見せずに話を続けている。だから、さっきの視線も緊張も、美奈の方が勝手に力を入れてしまったことなのだろう。
「危ないかどうかわからないって、どういうことなの」
 なんとか自分の呼吸を取り戻して、彼に質問をする。呼吸を整えるまでに彼が説明していたことは聞き逃してしまったが、この際、そんなことはどうでもよかった。
「だから、今話した……いや、僕の話し方が悪かったかな。要するに、僕が見た限り、このデジカメには美奈の言うような写真はないってこと」
「写真がない? そんな、私はちゃんと」
 秋山からデジカメを奪い取って、確認する。美奈は確かに見たのだ。たった一枚だけ紛れ込んだ、気味の悪い写真を。
 だが、秋山の言うとおり、デジカメのどの写真を見ても、件の高校生は映りこんでいない。気になって、窓ガラスを撮った写真以外も確認したが、一枚もそんな写真は存在しなかった。あるのはいつもの校舎の風景ばかり。
「どういうこと……ねえ、恭輔、私はちゃんと見たの。だから怖くなって」
「うん。僕も美奈を疑っているわけじゃない。ただ、今このデジタルカメラには、そんな画像はない。だから、僕はこれが危ないものなのかどうなのか、判断ができないって言ったんだ」
「待ってよ、それは私が嘘を言ってるってこと?」
「そうじゃない。どちらかといえば、僕が最近辰巳さんのところに行かないから、美奈が話の口実を作ったって結末の方が僕としては安心できるんだけど、そうじゃないだろ。美奈は今、嘘をついていない」
 そうだ。美奈は嘘をついていない。なら、なぜ写真はないのだろうか。
「美奈は部室で画像を確認した時、確かに心霊写真を視た。けれども、今ここにあるデジタルカメラには、その写真が残っていない。これがどういうことなのか、正直僕にもわからない。少なくても美奈は“憑かれて”いるような気配はないし、このカメラも一見すると危険な気配はない。ただ」
「ただ?」
「僕としては、このカメラはしばらく使わない方が良いと思う。なんなら、こっちで数日借りて調べてみてもいい。そういったツテはあるから。もし、美奈が不安に思っているような類のものであるなら、それは僕たちの領分だから、きっちり処分する」
「それは困るよ。だって、そのデジカメ、写真部のものだもん。明日も友達が撮影に使うだろうし……今デジカメはその一台しかないから替えが効かないの」
「それじゃあ、せめてこの写真データが入ったメモリだけでも、とはいかないか……わかった。今すぐに何かが起きるというわけでもないとは思うから、部室に戻してもいいけれど、異変があったらすぐに僕に連絡するんだ。それと、できることなら、早く代替機を買ってこいつを使うのを辞めること。どんな理由でもいい。何かあってからだと拙いことは、美奈だって良く知っているよね」
 秋山は、そう念を押してデジカメを美奈の方へと返した。
 何かあったら。秋山のその言葉に美奈は目の前のそれが改めて恐ろしいものに見えてきた。秋山に聞けばなんとかなる。漠然とそう思って連絡したのに、実際に彼に会ってみても、なんとかなる兆しはないし、それどころか、件の心霊写真は正体不明のままなのだ。
 そして、美奈は、秋山が扱うそれ――いわゆる幽霊や化物といった類、美奈の父や秋山は変異性災害と呼ぶ――が、厄介なものであることは、身に染みてわかっているつもりである。

――でも、カメラがないと明日の部活が困るんだよ

 秋山の言うとおりデジカメを彼に渡して、明日は桜や部長に適当な理由をつけておけばいい。それで円満解決だ。そう思う一方で、美奈はデジカメを手放すことができなかった。明日の部活動のため、このカメラは使わないといけないから。そうした気持ちばかりが膨らんで、美奈は机の上のデジカメを手に取り、秋山にできる限りの真剣な顔を向けた。

「わかった。これはなるべく使わないようにするし、替わりを用意したらすぐに、恭輔君に連絡する。それでいい?」

 それじゃだめだ。そんなことは美奈が一番よくわかっているはずなのに。
*******

 気が付けば、美奈はいつもどおりに登校し、こうしてぼんやり雲の形を眺めながら、今日も授業を受けている。
 秋山に見せたデジカメは、一日美奈の家に保管して、今は部室にそっと戻してある。放課後まではデジカメを使う人間もいないだろうし、授業が終わったら部長の所にカメラの不調を訴えに行こうと心に決めている。
 昨晩、家に帰ってからも美奈はあのデジカメの中をくまなく探した。けれども、まるで煙のようにかの高校生の姿は消えてしまった。いったい、あれはなんだったというのだろうか。
 そっと教室の端に座る桜の方を確認する。朝、校門で会った桜はいつもとなにも変わらない。結局、大森先輩の熱烈なアプローチから逃げきれなかったらしく、今日の放課後は、一度大森先輩と試合をするそうだ。
 心霊写真撮影の件、今日は休みでもいいかなあと尋ねてくる桜に、美奈はほっと胸をなでおろした。少なくても、今日はあのデジカメを必要とすることはなくなったのだから。それに、桜の様子が変わっていないということは、カメラに映った何かが桜を狙っていたわけではなかったのだろう。そう思うと、少し肩が軽くなった。
「ねぇ、美奈、美奈ってば」
 隣の席の石川ゆかりが、美奈の目の前で小さく手を振っていた。
「なに」
「美奈たち、この前から桃山先輩のあれ手伝ってるんでしょ」
 そういえば、ゆかりは新聞部の部長と中学校が一緒だと言っていた。美奈は教壇の上の先生に気がつかれないように、小さくうなずいた。
「うっそほんとに……じゃあ、もう知ってる?」
 知ってる? って、何を?

「今日の朝、出たらしいよ。窓に貼りつく高校生」

 ゆかりの言葉に美奈が思わず席を立ちあがったのと、美奈たちの教室の上で何かが割れる大きな音がしたのはほぼ同時だった。
「なんだ?」
「結城さん、どうかしましたか」
「今の音、窓の方だろ」
 美奈が立ちあがったことに気を取られた先生と、上の階の音に気を取られた生徒が入り混じり、教室の中は一瞬でざわめきに包まれた。
 窓際に駆けよった男子が窓を開けて身を乗り出し、声を上げる。
「なんだ、いまの?」
 どうやら上の階の生徒と話をしているらしい。そして、教室内に戻ると、ぽつんと呟いた。
「急に窓が割れたらしい。理科室の右から三番目だってさ」
 その言葉に身を固めたのは、クラスの三分の一くらいだったと思う。もちろん、美奈もその中の一人だ。
 そして、身を固めた者たちは、彼の言葉の意味を理解したに違いない。

理科室の右から三番目。落下する高校生の霊が見えるという曰くつきの窓。

 窓の外に張りついていた彼が、これ以上落ちるのが厭で窓ガラスを叩き割って、理科室の中に入ってくる、そんな光景がふとよぎった。
 それは駄目だ。あの高校生はこちらに来ていいものではない。
 ざわめきが広がる教室の中で、美奈は一人、立ちつくすことしかできなかった。

*******

 窓が割れた原因はよくわかんないんだって。授業中にいきなりヒビが入って、大きな音を立てて割れたらしいよ。
 え、ガラスが校内に入ったかって。んー。授業受けてた子、ほら、ウチの一年の小谷いるじゃん。あいつがちょうど授業受けてたらしいんだけど、外に向かって割れたらしいよ。うん。だから、けが人はいなかったって。
 あー。そっか、そうだよね、美奈あたまいいね。でも、何でそんな風に割れたんだろう。だって、窓が割れた時、そこには何もなくて、内側から強い衝撃を受けたこともなかったんだよ?

 ん? 小谷? それがねー。部室のデジカメ持ち出して授業中にいじってたらしくてさ。窓が割れた騒ぎを撮影しようとしてデジカメの操作間違ったんだって。いきなりカメラから煙が出て壊れちゃったらしくて、それでびっくりして転んだだかで、保健室につれていかれたって。
 その後は、ハシモトからお説教。なんか、やたらにしょげてさっき帰ったわ。ったく、部用のメモリーいれたまんまで使ったもんだから、パソコンに取り込む前のデータなくなったのよ。あ、昨日使ってたのって美奈たちだっけ? ちゃんと画像取りこんだ?

 まったく、ウチとしては窓ガラスの話よりも、デジカメ失った方が大事だわ。これからハシモトにかけあってくる。まあ、古いデジカメだったし、新しく買い替えるいい機会だとか色々言ってみるよ。いまこそ会計の腕の見せ所って感じ? じゃ、またね

ーーーーーーーーーーー

次回 キルロイ2
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プロフィール
HN:
若草八雲
年齢:
37
性別:
非公開
誕生日:
1986/09/15
職業:
××××
趣味:
読書とか創作とか
自己紹介:
色んなところで見かける人もいるかもしれませんがあまり気にせず。
ブログとか作ってみたけれど続くかどうかがわからないので、暇な人だけ見ればいいような。
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