忍者ブログ
作成した小説を保管・公開しているブログです。 現在は連作短編が二篇の他,短編小説,エッセイの類を掲載しています。 連作小説の更新ペースは随時。二か月に三回を最低ラインとして目指しています。
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

こびとの楽隊
発掘したテキスト。プロットだけなら何かに使えるかも

――――――

楽隊は意識の淵からやってくる。そして、意識の淵へと還っていく。

トタタン トタン トタタタン

今夜も彼らは私の部屋へとやってくる
彼らはとても遠いところからやってくる。天井裏に到着すると、縁に沿って一列に並ぶ。
ベッドで眠る私には、どういうわけか天井裏のその様子が視えてしまう。どんなに早く寝ようとも、どんなに遅く寝ようとも、私の眼は彼等の訪れを逃すことがない。
縁に沿って並んだ楽隊は、抱えた楽器を一度振り上げる。そして決まってベッドにいる私を見つめる。もっとも、彼らには顔がない。のっぺりとした丸いものが何人も何人も、私の顔を覗きこんでいる。
私の表情がこわばると、軍楽隊の帽子を被った奴が天井裏の中心へとある歩いていく。彼はいつもトテトテと奇妙な足音を立てながら、自分よりも遥かに長い指揮棒を引きずっている。どうしてそんなに長い棒が必要なのか、その理由はよくわからない。
彼は中央に立つと、四方に並んだ自らの楽隊を眺めまわす。そして、指揮棒を宙へと放り投げる。宙に待った指揮棒は、四隅に並ぶ楽隊にきっちり四回打ち貫かれ、八本の指揮棒へと姿を変える。いつのまにか指揮者も四人に増えており、各自二本の指揮棒を捕まえる。
それを合図に楽隊はピンと背筋を伸ばして整列する。

トタタン トタン トタタタン

四人の指揮者が奇妙な足音をたて、今宵の演奏の始まりを告げる。

深夜の楽隊は軽快に音楽を奏でながら天井裏を闊歩する。
向かい合う辺に立つ楽隊が音楽に合わせて前進し、出会ったところで互いに会釈をしながら、くるりと一回転をする。そして、更に前進、向かい側の辺に辿りつくと再度回転し、再び辺の上で演奏を続ける。
そんなやりとりを続けているかと思えば、数名ごとにふらふらと天井へと足を踏み出し、三人一組の輪を作り、まるで舞踏会のようなパフォーマンスを始める。
こうして毎夜毎夜、私の意思とは全く関係なく楽隊は盛り上がりを増していく。彼らの奔放なパフォーマンスが最高潮に達すると、指揮者たちが、再びあのリズムで足踏みを始める。

トタタン トタン トタタタン トタタン トタン トタタタン

指揮者のリズムに合わせて、辺に並んだ楽隊は一列に並んで面へと入り込んでくる。彼らは渦を巻くように円を描きながら指揮者に向かって歩いていく。指揮者は楽隊を指揮しながらとどまることなく足踏みを続ける。
指揮者たちの足踏みに合わせて、彼らの足元は徐々に下へと陥没していく。次第に天井はすり鉢状に姿を変え、指揮者たちは私の部屋の床へと降り立とうと懸命に足踏みを続ける。
初めは軽快な音楽だった楽隊も、指揮者が床へと近づくほどに徐々に演奏の速度が落ちて間延びした不安を掻き立てる音を奏で始める。加えて時折、指揮者の回転に合わせて不協和音を混ぜながら、楽隊はじわりじわりと指揮者に向かって近づいていく。

私はその光景に強い不安を覚え、部屋を逃げ出そうとするが、身体はこわばり、ベッドから動くことすらできない。
指揮者たちがベッドの高さと同じところまで辿りついた所で私の顔は自然と横を向き、指揮者たちの様子を眼で追いかける。
私の方を向いている指揮者と眼が合い、全身に寒気が走る。今までは存在しなかったはずの大きな瞳に震え、指揮者の体に縦に入った割れ目から現れる舌に私の恐怖は増大する。指揮者は恐怖におびえているであろう私の顔をじっとみて、ゆっくりと舌舐めずりをする。

私は声にならない叫び声を上げる。

そうして、再び気がつくと、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。天井はすり鉢状に変形などしておらず、私の眼が天井裏を捉える事はない。身体を確認しても何処にも異常がなく、夢であった事を確認して、私は深いため息をつく。

ベッドから起き上がり、立ち上がると、パジャマから何かがこぼれおち、フローリングの床に転がった。
カタンと音を立てたモノの正体を確かめようと、私の視線は床へと向けられる。そして

私の眼は床に転がる人差し指ほどしかない指揮棒に吸い寄せられた。

PR
comments
yourname ()
title ()
website ()
message

pass ()
| 31 | 30 | 28 | 27 | 26 | 25 | 23 | 22 | 21 | 20 | 19 |
| prev | top | next |
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
若草八雲
年齢:
37
性別:
非公開
誕生日:
1986/09/15
職業:
××××
趣味:
読書とか創作とか
自己紹介:
色んなところで見かける人もいるかもしれませんがあまり気にせず。
ブログとか作ってみたけれど続くかどうかがわからないので、暇な人だけ見ればいいような。
バーコード
ブログ内検索
P R
最新CM
[03/01 御拗小太郎]
[01/25 NONAME]
最新TB
Design by Lenny
忍者ブログ [PR]