作成した小説を保管・公開しているブログです。
現在は連作短編が二篇の他,短編小説,エッセイの類を掲載しています。
連作小説の更新ペースは随時。二か月に三回を最低ラインとして目指しています。
[PR]
2025.02.02 Sunday
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
虎の衣を駆る ラフテキスト
2012.08.20 Monday
話のプロットを大きく変えたら長くなってきてしまい、なかなか本文を完成させられない。〆切を守れるようになるためには、書くのが早くならなければならないのに。
法律系の文書も小説も遅いんじゃ仕事にならないよね全く。
以下ラフテキスト
*********
――力をあげる。貴方のなかのその苛立ちを、これで解消すればいい。
確かにそう言った。顔も、声も思い出せない。思いだそうとすれば、頭の芯が痺れたようになって視界が歪む。あれは、いつ、どこのことだ。俺はいったい何と会話して、何を承諾したというのだろうか。
人気のないはずの建物内で、何かが激しく廊下や壁を蹴る音が聞こえてくる。それは、確実にこちらに近づいて来ていた。そんな馬鹿な。俺はうまくやったはずだ。何で追ってくるのだ。さっきからずっとこの方法で見つからずにやってきたはずなのに。
「見つけた! そこを動くな臆病者」
近くの空き部屋に逃げ込もうとしたがワンテンポ遅れた。それは、突然廊下に現れ、天井を一蹴りし、宙返りをした上で床に降り立った。手に持った刀の切っ先は廊下の端にいる俺に向かって突きつけられている。その距離、三〇メートルほど。すぐに空き部屋に入って扉に鍵をかけ、別の扉から出れば逃げ切れるはずだ。しかし、目の前の女の気配に足がすくむ。
「『虎』になったのはキミでしょう? 右手のバッグの中に毛皮が入っているのかな」
『虎』になった。そんなつもりはない。俺は、別にそんなことがしたかったわけではないのだ。
「応戦する気もなければ、素直に投降する気もないの。全く、怯えを体中から垂れ流しているだけはあるね。反応ないならこっちから行くよ」
女の気配が鋭くなる。姿勢を低くして、こちらに向かって強く踏みこむ。廊下に響く大きな音と共に女の身体が膨れ上がったかのようになり、俺は思わず声をあげて隣のドアを開けた。空き部屋に逃げ込んだと同時にドアが廊下の奥へと向かって吹き飛んでいく。
あまりの光景に腰を抜かし、へたり込んだ俺の前では先ほどの女が刀を片手に吹き飛んだドアの方向を眺め何事かを呟いている。
死ぬ。何が何だかわからないうちに、今ここで俺は死ぬ。あの女に殺されるに違いない。
――チカラガホシイダロウ イキノコリタイダロウ
手に抱えたバッグの中からは、あの声が響いてくる。とっさに手を入れると、すぐにあれに手が触れる。あれはまるで待っていたかのように俺の体に纏わりつきはじめる。
怖い。いいのか、この声に従って、俺はあんな風になりたかったのか。女が独り言を終えて、俺の顔を見る。再び刀のきっさきを俺の顔に向ける。さっきよりも遥かに近い。彼女が数歩近付けば、俺の目の前に刀が来ることだろう。死にたくない。死にたくない
――ソウダ イキノコレ チカラヲクレテヤロウ
バッグの中の声が頭の中に満ち溢れる。チカラ、チカラ、チカラチカラチカラチカラ。
右手から右腕に、肩を超えて身体全身へ、あれの感触が一気に広がっていく。俺は、俺はこんなところで死にたくない。その一心であれの言葉に全身をゆだねた。その光景に女が大きく目を見開いた。
そうだ。畏れることはない。所詮人間なのだから。俺は、俺はこんな女に殺されるわけがない。
*********
ここだけ切り取っても何の話だかわかんないよねー。
というのはさておき。
最近、小説ないの一文の長さの適切性を判断するために、文体診断ロゴーン(http://logoon.org/)というものを利用しています。
一度の診断量が五千字に限られるので、一場面一場面で区切って診断する感じで利用しているのですが、場面ごとに似ている文体の人の表示が違う違う。
文体が似ていない人のトップにはずっと岡倉天心さんが君臨しているのですが、似ている文体は切り取る場面によって大きく変化するので、私の文章どうなってるの全くと思うところ。
そうはいっても、出てくる作家の種類なんて限られて……などと思っていたら、今回のラフテキストはまさかの小林多喜二と松たか子が出現したので、記録として残しておこうと思ったところ。
以下、「虎の衣を駆る ラフテキスト2」の診断結果
<一致指数ベスト3
1 小林多喜二 83.9
2 松たか子 83.8
3 菊池寛 83.3
<一致指数ワースト3
1 岡倉天心 48.6
2 三木清 57.2
3 吉田茂 57.2
<文章評価
「評価項目」と「評価」、「コメント」が表示されます。
文章の読みやすさの評価項目が、主に一文の長さを指標としている節があるので(今回はAなのでわかりにくい)、ここの指標を利用させてもらっています。
文章の読みやすさ A とても読みやすい
文章の硬さ A 適切
文章の表現力 A とても表現力豊か
文章の個性 A とても個性的
以上診断結果。
まあ、こういうのは助詞や名詞の種類、一文の長さや仮名・漢字の割合などで機械的に判断しているものだと思うので、文章自体の内容は流石に評価してもらえないのですが、内容がいくら面白かったり示唆に富む文章であっても、読み難いことこの上ない文章であれば読む気が失せてしまうよなーとも思います。
そういった意味では、読みやすい文章を心がけるのも大切なのでしょう。
内容? 内容は…ないようはなー(
法律系の文書も小説も遅いんじゃ仕事にならないよね全く。
以下ラフテキスト
*********
――力をあげる。貴方のなかのその苛立ちを、これで解消すればいい。
確かにそう言った。顔も、声も思い出せない。思いだそうとすれば、頭の芯が痺れたようになって視界が歪む。あれは、いつ、どこのことだ。俺はいったい何と会話して、何を承諾したというのだろうか。
人気のないはずの建物内で、何かが激しく廊下や壁を蹴る音が聞こえてくる。それは、確実にこちらに近づいて来ていた。そんな馬鹿な。俺はうまくやったはずだ。何で追ってくるのだ。さっきからずっとこの方法で見つからずにやってきたはずなのに。
「見つけた! そこを動くな臆病者」
近くの空き部屋に逃げ込もうとしたがワンテンポ遅れた。それは、突然廊下に現れ、天井を一蹴りし、宙返りをした上で床に降り立った。手に持った刀の切っ先は廊下の端にいる俺に向かって突きつけられている。その距離、三〇メートルほど。すぐに空き部屋に入って扉に鍵をかけ、別の扉から出れば逃げ切れるはずだ。しかし、目の前の女の気配に足がすくむ。
「『虎』になったのはキミでしょう? 右手のバッグの中に毛皮が入っているのかな」
『虎』になった。そんなつもりはない。俺は、別にそんなことがしたかったわけではないのだ。
「応戦する気もなければ、素直に投降する気もないの。全く、怯えを体中から垂れ流しているだけはあるね。反応ないならこっちから行くよ」
女の気配が鋭くなる。姿勢を低くして、こちらに向かって強く踏みこむ。廊下に響く大きな音と共に女の身体が膨れ上がったかのようになり、俺は思わず声をあげて隣のドアを開けた。空き部屋に逃げ込んだと同時にドアが廊下の奥へと向かって吹き飛んでいく。
あまりの光景に腰を抜かし、へたり込んだ俺の前では先ほどの女が刀を片手に吹き飛んだドアの方向を眺め何事かを呟いている。
死ぬ。何が何だかわからないうちに、今ここで俺は死ぬ。あの女に殺されるに違いない。
――チカラガホシイダロウ イキノコリタイダロウ
手に抱えたバッグの中からは、あの声が響いてくる。とっさに手を入れると、すぐにあれに手が触れる。あれはまるで待っていたかのように俺の体に纏わりつきはじめる。
怖い。いいのか、この声に従って、俺はあんな風になりたかったのか。女が独り言を終えて、俺の顔を見る。再び刀のきっさきを俺の顔に向ける。さっきよりも遥かに近い。彼女が数歩近付けば、俺の目の前に刀が来ることだろう。死にたくない。死にたくない
――ソウダ イキノコレ チカラヲクレテヤロウ
バッグの中の声が頭の中に満ち溢れる。チカラ、チカラ、チカラチカラチカラチカラ。
右手から右腕に、肩を超えて身体全身へ、あれの感触が一気に広がっていく。俺は、俺はこんなところで死にたくない。その一心であれの言葉に全身をゆだねた。その光景に女が大きく目を見開いた。
そうだ。畏れることはない。所詮人間なのだから。俺は、俺はこんな女に殺されるわけがない。
*********
ここだけ切り取っても何の話だかわかんないよねー。
というのはさておき。
最近、小説ないの一文の長さの適切性を判断するために、文体診断ロゴーン(http://logoon.org/)というものを利用しています。
一度の診断量が五千字に限られるので、一場面一場面で区切って診断する感じで利用しているのですが、場面ごとに似ている文体の人の表示が違う違う。
文体が似ていない人のトップにはずっと岡倉天心さんが君臨しているのですが、似ている文体は切り取る場面によって大きく変化するので、私の文章どうなってるの全くと思うところ。
そうはいっても、出てくる作家の種類なんて限られて……などと思っていたら、今回のラフテキストはまさかの小林多喜二と松たか子が出現したので、記録として残しておこうと思ったところ。
以下、「虎の衣を駆る ラフテキスト2」の診断結果
<一致指数ベスト3
1 小林多喜二 83.9
2 松たか子 83.8
3 菊池寛 83.3
<一致指数ワースト3
1 岡倉天心 48.6
2 三木清 57.2
3 吉田茂 57.2
<文章評価
「評価項目」と「評価」、「コメント」が表示されます。
文章の読みやすさの評価項目が、主に一文の長さを指標としている節があるので(今回はAなのでわかりにくい)、ここの指標を利用させてもらっています。
文章の読みやすさ A とても読みやすい
文章の硬さ A 適切
文章の表現力 A とても表現力豊か
文章の個性 A とても個性的
以上診断結果。
まあ、こういうのは助詞や名詞の種類、一文の長さや仮名・漢字の割合などで機械的に判断しているものだと思うので、文章自体の内容は流石に評価してもらえないのですが、内容がいくら面白かったり示唆に富む文章であっても、読み難いことこの上ない文章であれば読む気が失せてしまうよなーとも思います。
そういった意味では、読みやすい文章を心がけるのも大切なのでしょう。
内容? 内容は…ないようはなー(
PR
煙々羅 2
2012.06.23 Saturday
黒猫堂怪奇絵巻1 煙々羅 1
黒猫堂怪奇絵巻1ラフテキストAの完成版、後半部。
なんでこのようなプロットを作ってしまったのか大変に謎である。
とにもかくにも、昔はこういった作品を書いていたらしい。
設定だけはわりと好きなのでもっとうまく書いてあげたい。
練習練習。
以下本文
―――――――
<黒猫堂怪奇絵巻1 煙々羅 2>
6
一日の業務が終わり、職員のほとんどが退社したころには、外はすっかり暗くなっていた。警察の再度の事情聴取も終わり、帰宅の準備をしていた佐藤総司は、ふと斎場内に残っているのは自分くらいなものであることに気が付き、薄気味悪さを覚えた。
元々、幽霊だの憑きものだのといった怪談話を信じるような性質ではない。だから、火葬場で働くことになったときもそれほど怖さを感じることはなかったように思う。けれども、ここのところ続いていた「事件」のせいか、佐藤は斎場内の息の詰まるような空気に知らず知らずのうちに怯えていた。昼間のように予約が続き、他の職員が動き回っている間は大丈夫なのであるが、こうして改めて独りで事務室にいるとその辺の壁や天井に何かいるのではないかとの不安に駆られる。
無論、何もいるわけがない。考え過ぎなのだと自分に言い聞かせ、手早く机の上を片付けていく。しかし、机の上に視線をやっていると、後ろの方から誰かにじっと見つめられているような気がして、落ち着かない。振り返ってみるも、やはり誰もいない。
先ほどからずっとこの調子で、あるはずのない視線に怯えるばかりでいつまでたっても事務所から出ることができない。一体何がどうしたというのだ。
ふと、頭の中に昼間やってきた市役所の職員たちの顔がよみがえる。特に、女性の職員の隣にいたワイシャツの青年。彼は、佐藤が職員の失踪について知らないと答えたとき、妙な視線を向けなかっただろうか。
トントン
不意に事務所の扉をたたく音がして、佐藤は思わず飛び上がった。こんな時間に誰だろうか。もうあらかたの職員は帰宅したはずだが。
「佐藤さんは聞きましたか、四号炉前ホールで小暮さんが消えたって話。あの後、小暮さんが時々視界の隅に入るって話があって」
急に他の職員が話していた噂話を思い出してしまい佐藤は後ろを振り返るのが怖くなった。まさか、そんなはずはなかろう。それに、小暮がいるのであればそれは良かったではないか。長期入院から復帰したのだから。とはいえ、こんな夜遅くにやってくる必要はない。明日からの出勤で全然構わないのに。
「あれ、誰もいないのかと思いましたが、ちゃんといるじゃないですか」
背後から聞こえてきた声が小暮のものではなかったため、佐藤は思わず大きく息を吐いた。振り返ると、事務所の入り口に例の青年が立っている。昼間とは違い、黒いロングコートを着込んでいて、薄暗い事務所の中では少々不気味に思えた。
「君は確か、秋山恭輔さん?」
「名前を覚えていてもらえて光栄です。お昼にお会いした方ですよね。確か、佐藤さん。今、お帰りでしたか」
「あ、ああ。ちょっと残業に手間取ってしまってね。ところで、君はこんな時間に何の用だい。もう斎場は終了しているし、職員も僕を残して誰もいないと思ったが」
「ええ。ですから失踪した少女を探すのも楽かと思いまして。ほら、昼間だと遺族の方々と顔をあわせないようにしないといけないですから、探す場所も限られてしまったでしょう。この時間なら流石に火葬の予約なんて入っていないですよね」
秋山と名乗る青年はそう言って、一歩、佐藤の方へと歩み寄った。
「そ、そうだね。大体5時過ぎくらいには最後の火葬が終わるからね。もう7時も過ぎている。確かに今ここでは火葬は行われていないよ」
「そうでしたか。それはよかった。もしかして火葬が行われていたらどうしようかと思っていたんですよ。つまらない噂ですが、あるじゃないですか、火葬場は夜も人を焼いているという話」
夜も人を焼いている。その言葉を聞いた途端、佐藤は背中に寒気を感じた。そんなはずがない。篠山斎場は午後5時の火葬を最後に一日の業務を終了する。それ以降は次の営業日まで火葬炉を動かすことはないのだ。
「そんなくだらない噂を真に受けないでほしいな。夜間までこんな場所に残って火葬をするだなんて、大体遺族の方も大変だろう。ここに来るまではまるで山道なんだから」
「僕たちも来てみて同じことを思いました。こりゃあ、夜に調査したいなんて頼んだのは飛んだ失敗だったなと。あ、所長さんには事前に許可を取ってありますんで大丈夫です。それに、もう少ししたら警察の方の他、数人職員の方が応援に来ていただけるそうでして。でも、佐藤さんがいて幸運でした。それまで独りで斎場の中を歩き回るなんて、何か出たら怖いじゃないですか。案内、お願いできますか?」
この青年は何を言っているのだろうか。佐藤が先ほど帰る支度をしていたと言ったのを忘れているのだろうか。それを斎場の中を案内しろなどと、一体何のつもりなのだ。
「あんまり乗り気じゃないみたいですね」
「当たり前だ。こんな時間に急に訪れて斎場を案内しろだなんて、さっき私は帰宅するところだと言っただろう」
「ですから、そこは申し訳ないですが案内をお願いしたいと頼んでいるんです。それとも、ここに長居したくない理由でも」
「誰だって、夜の火葬場になんて長居したくはないさ」
「何かでるかもしれないから、ですか」
「そ、そういうことを言っているわけでは」
「例えば、消えた従業員の形をした煙のお化けとか」
思わず、言葉が詰まる。そんなもの居るわけがないと突っぱねたいのだが、喉元まで上がっている言葉が出てこない。怖い。佐藤は目の前の青年に、自分が立っているこの斎場に、明確に恐怖を感じていた。煙のお化けなどばかばかしい。頭ではそう思っているにもかかわらず、真剣な顔で近付いてくる青年をみると否定しきれない。そんなもの、いるはずがないのに。
「ところで、佐藤さんは昼間夜宮さんが述べた所属部署名を聞き取れていませんでしたよね。僕は、巻目市役所環境管理部第四課変異性災害対策係というところに雇われている外部コンサルタントです。つまり、僕は市役所に雇われて変異性災害と呼ばれる特殊なケースについての処理をしているわけです」
「へんいせい、さいがい?」
何を意味する言葉なのかは全く分からないが、そのような言葉と少女や職員の失踪は結びつかない。一体どうしてそのへんいせいさいがい対策係などという部署が出張ってくるのか。
「ええ、変異性災害。正確には、人間の精神的変異を起因とする物理的干渉能力を有する幻覚及びそれに類する精神体により惹起される災害一般と呼称されますが、長くて面倒なので変異性災害と呼ばれています。先ほどの様子だと、佐藤さんは幽霊や化け物といった非科学的な存在を信じない方のようにお見受けしますね。ですが、変異性災害とはまさにそういった存在、怪異が原因で起きる異常事態のことなのですよ」
「君が、何を言っているか、その、よく、わからないのだが」
いつの間にか、青年は佐藤の前に立っていた。そして、佐藤を下から眺め見るように、ぐっと顔を近づけてにこやかにほほ笑んだ。
「早い話が、佐藤総司さん、および篠山斎場は憑かれているんですよ。煙々羅という化け物に」
耳元で涼しげな鈴の音が鳴り響き、佐藤の意識は遠くなっていく。
黒猫堂怪奇絵巻1ラフテキストAの完成版、後半部。
なんでこのようなプロットを作ってしまったのか大変に謎である。
とにもかくにも、昔はこういった作品を書いていたらしい。
設定だけはわりと好きなのでもっとうまく書いてあげたい。
練習練習。
以下本文
―――――――
<黒猫堂怪奇絵巻1 煙々羅 2>
6
一日の業務が終わり、職員のほとんどが退社したころには、外はすっかり暗くなっていた。警察の再度の事情聴取も終わり、帰宅の準備をしていた佐藤総司は、ふと斎場内に残っているのは自分くらいなものであることに気が付き、薄気味悪さを覚えた。
元々、幽霊だの憑きものだのといった怪談話を信じるような性質ではない。だから、火葬場で働くことになったときもそれほど怖さを感じることはなかったように思う。けれども、ここのところ続いていた「事件」のせいか、佐藤は斎場内の息の詰まるような空気に知らず知らずのうちに怯えていた。昼間のように予約が続き、他の職員が動き回っている間は大丈夫なのであるが、こうして改めて独りで事務室にいるとその辺の壁や天井に何かいるのではないかとの不安に駆られる。
無論、何もいるわけがない。考え過ぎなのだと自分に言い聞かせ、手早く机の上を片付けていく。しかし、机の上に視線をやっていると、後ろの方から誰かにじっと見つめられているような気がして、落ち着かない。振り返ってみるも、やはり誰もいない。
先ほどからずっとこの調子で、あるはずのない視線に怯えるばかりでいつまでたっても事務所から出ることができない。一体何がどうしたというのだ。
ふと、頭の中に昼間やってきた市役所の職員たちの顔がよみがえる。特に、女性の職員の隣にいたワイシャツの青年。彼は、佐藤が職員の失踪について知らないと答えたとき、妙な視線を向けなかっただろうか。
トントン
不意に事務所の扉をたたく音がして、佐藤は思わず飛び上がった。こんな時間に誰だろうか。もうあらかたの職員は帰宅したはずだが。
「佐藤さんは聞きましたか、四号炉前ホールで小暮さんが消えたって話。あの後、小暮さんが時々視界の隅に入るって話があって」
急に他の職員が話していた噂話を思い出してしまい佐藤は後ろを振り返るのが怖くなった。まさか、そんなはずはなかろう。それに、小暮がいるのであればそれは良かったではないか。長期入院から復帰したのだから。とはいえ、こんな夜遅くにやってくる必要はない。明日からの出勤で全然構わないのに。
「あれ、誰もいないのかと思いましたが、ちゃんといるじゃないですか」
背後から聞こえてきた声が小暮のものではなかったため、佐藤は思わず大きく息を吐いた。振り返ると、事務所の入り口に例の青年が立っている。昼間とは違い、黒いロングコートを着込んでいて、薄暗い事務所の中では少々不気味に思えた。
「君は確か、秋山恭輔さん?」
「名前を覚えていてもらえて光栄です。お昼にお会いした方ですよね。確か、佐藤さん。今、お帰りでしたか」
「あ、ああ。ちょっと残業に手間取ってしまってね。ところで、君はこんな時間に何の用だい。もう斎場は終了しているし、職員も僕を残して誰もいないと思ったが」
「ええ。ですから失踪した少女を探すのも楽かと思いまして。ほら、昼間だと遺族の方々と顔をあわせないようにしないといけないですから、探す場所も限られてしまったでしょう。この時間なら流石に火葬の予約なんて入っていないですよね」
秋山と名乗る青年はそう言って、一歩、佐藤の方へと歩み寄った。
「そ、そうだね。大体5時過ぎくらいには最後の火葬が終わるからね。もう7時も過ぎている。確かに今ここでは火葬は行われていないよ」
「そうでしたか。それはよかった。もしかして火葬が行われていたらどうしようかと思っていたんですよ。つまらない噂ですが、あるじゃないですか、火葬場は夜も人を焼いているという話」
夜も人を焼いている。その言葉を聞いた途端、佐藤は背中に寒気を感じた。そんなはずがない。篠山斎場は午後5時の火葬を最後に一日の業務を終了する。それ以降は次の営業日まで火葬炉を動かすことはないのだ。
「そんなくだらない噂を真に受けないでほしいな。夜間までこんな場所に残って火葬をするだなんて、大体遺族の方も大変だろう。ここに来るまではまるで山道なんだから」
「僕たちも来てみて同じことを思いました。こりゃあ、夜に調査したいなんて頼んだのは飛んだ失敗だったなと。あ、所長さんには事前に許可を取ってありますんで大丈夫です。それに、もう少ししたら警察の方の他、数人職員の方が応援に来ていただけるそうでして。でも、佐藤さんがいて幸運でした。それまで独りで斎場の中を歩き回るなんて、何か出たら怖いじゃないですか。案内、お願いできますか?」
この青年は何を言っているのだろうか。佐藤が先ほど帰る支度をしていたと言ったのを忘れているのだろうか。それを斎場の中を案内しろなどと、一体何のつもりなのだ。
「あんまり乗り気じゃないみたいですね」
「当たり前だ。こんな時間に急に訪れて斎場を案内しろだなんて、さっき私は帰宅するところだと言っただろう」
「ですから、そこは申し訳ないですが案内をお願いしたいと頼んでいるんです。それとも、ここに長居したくない理由でも」
「誰だって、夜の火葬場になんて長居したくはないさ」
「何かでるかもしれないから、ですか」
「そ、そういうことを言っているわけでは」
「例えば、消えた従業員の形をした煙のお化けとか」
思わず、言葉が詰まる。そんなもの居るわけがないと突っぱねたいのだが、喉元まで上がっている言葉が出てこない。怖い。佐藤は目の前の青年に、自分が立っているこの斎場に、明確に恐怖を感じていた。煙のお化けなどばかばかしい。頭ではそう思っているにもかかわらず、真剣な顔で近付いてくる青年をみると否定しきれない。そんなもの、いるはずがないのに。
「ところで、佐藤さんは昼間夜宮さんが述べた所属部署名を聞き取れていませんでしたよね。僕は、巻目市役所環境管理部第四課変異性災害対策係というところに雇われている外部コンサルタントです。つまり、僕は市役所に雇われて変異性災害と呼ばれる特殊なケースについての処理をしているわけです」
「へんいせい、さいがい?」
何を意味する言葉なのかは全く分からないが、そのような言葉と少女や職員の失踪は結びつかない。一体どうしてそのへんいせいさいがい対策係などという部署が出張ってくるのか。
「ええ、変異性災害。正確には、人間の精神的変異を起因とする物理的干渉能力を有する幻覚及びそれに類する精神体により惹起される災害一般と呼称されますが、長くて面倒なので変異性災害と呼ばれています。先ほどの様子だと、佐藤さんは幽霊や化け物といった非科学的な存在を信じない方のようにお見受けしますね。ですが、変異性災害とはまさにそういった存在、怪異が原因で起きる異常事態のことなのですよ」
「君が、何を言っているか、その、よく、わからないのだが」
いつの間にか、青年は佐藤の前に立っていた。そして、佐藤を下から眺め見るように、ぐっと顔を近づけてにこやかにほほ笑んだ。
「早い話が、佐藤総司さん、および篠山斎場は憑かれているんですよ。煙々羅という化け物に」
耳元で涼しげな鈴の音が鳴り響き、佐藤の意識は遠くなっていく。
煙々羅 1
2012.06.17 Sunday
黒猫堂怪奇絵巻1、前半部。
後半部は手直しが終わっていないので後日記事にしようかと。
長いので何か展示方法を考えよう。
以下本文
******
<黒猫堂怪奇絵巻1 煙々羅 1>
怪異。それは人の心に潜み、現実世界への浸食の機会を窺う現世とは異なる理に従う存在と言われる。現れるきっかけは多種多様であり、その姿も千差万別であるが、唯一共通している点として宿主の心に巣食った後は、宿主を媒介に周囲の人間へとその影響を広げようとする傾向が指摘されている。
一度憑いた怪異たちは、宿主の意思でその存在が排除される例は少ない。宿主の器が怪異に耐えられなくなり精神を病んでしまう、命を落とすなどの理由によりその存在基盤を失うか、他者へと影響力をひろげた結果ついには確固たる形をもって現実世界に立ち現われるかの二通りの道を通るのが通常だ。
しかし、現世と異なる理を持つ怪異たちの浸食を許すことは、現世の理を揺らがせることに相違ない。すなわち、怪異とは我々を崩壊させる近くて遠い隣人である。
――西原当麻『怪異論』より
1
その日は雲が見当たらなく透き通った青空が印象的で、外に出ると太陽の光で目が霞み、外の光景は何もかもがやけに明るく見えた。
連日雨続きであったのにも関わらず、まるで狙ったかのように快晴になったものだから、出席した親戚たちは口々に姉は最後まで晴れ女であったと言う。僕もその意見には反対しないが、皆と共に明るくそのような話題をする気分ではなかった。
父や母は、残った者がいつまでも名残惜しいような表情をしていると、離れるに離れられなくなるので努めて明るく振る舞うのだと、僕や、姉の娘に言い聞かせた。姉の娘、藍はまだ小学校に上がるまえだから、父と母の話をよくわからずに聞いていたのだろう。うんうんと頷いてはいたが、こうして姉が消えていく様子を眺めている僕の手を何度も引っ張り、「ママはまだ帰ってこないの?」と尋ねてくる。
残念ながら、僕には彼女に応えられる言葉がない。二十歳をとうに過ぎて、まもなく社会に出ようとしているにも関わらず、家族が一人亡くなったことを自分の中でどう受け止めればいいか、それを考えるだけで精いっぱいだった。
「武兄ちゃん、もくもくでてる」
藍が火葬場の煙突を指差して不思議そうに声を上げる。時計を確認するに、そろそろ姉の遺体の火葬が始まったころだろう。僕は、焼香を済ませた後、葬儀場に留まる気にならなかったから、藍を連れて外に出てきた。けれども、ああして煙になっていく姉を見ると、火葬前に藍を姉と対面させてやるべきだったのではないだろうかとも思う。
僕は、しゃがみこんで藍と目線の高さを合わせ、彼女の頭を優しくなでた。藍は何故僕がそのようなことをするのかもわからず目を丸くしてこちらを見つめている。
「武兄ちゃん、どうして泣いてるの?」
「え、ああ。どうしてだろうね」
「そんなに泣いてると、またママに怒られるよ」
藍の言葉に僕は姉がよく僕に気を強く持つようにと言っていたことを思い出す。もうあのような言葉をくれる姉はいないのだ、せめて姉に心配をかけないようにしなければと思うが、一度流れ始めた涙を止めることは難しかった。恥ずかしいことに、目の前の少女に頭をなでられ「よしよし」と慰められる始末だ。これからの彼女の方が僕よりもずっと大変であるというのに。
「ママ、武兄ちゃん泣きやまないよ。早く下りてきて」
藍は、空に向かって無邪気にそう言った。藍の視線の先には火葬場の煙突から排出された煙がゆらゆらと蠢いている。どうやら、彼女は姉がどうなったのか、彼女なりに理解しているらしい。
「藍は強いな。兄ちゃんも泣かないから、大丈夫」
僕は立ちあがって、藍の頭を撫でてやる。いつまでもこうしているわけにもいかないし、まずは藍と共に両親の所に戻ろう。そう思った時だった。
「あ、ママが手を振ってるよ! ママこっち!こっち!」
藍が煙に向かって笑顔で両手を振り、駆け出していく。僕は突然の彼女の挙動に驚いてしまい、反応が一瞬遅れた。そして、その一瞬が僕から更に家族を奪い去った。煙突から吹き出た煙が地上に、藍に向かって急速に接近し、彼女を飲みこんでしまったのだ。
「藍、おい。藍!」
煙が勢いよく僕の横を通り過ぎた後、辺りからは一切人の気配が消えていた。突然、全く突然のことだ。
僕の姉、岬タエの葬儀の日、彼女の娘である藍は煙に呑まれて僕の前から姿を消した。
後半部は手直しが終わっていないので後日記事にしようかと。
長いので何か展示方法を考えよう。
以下本文
******
<黒猫堂怪奇絵巻1 煙々羅 1>
怪異。それは人の心に潜み、現実世界への浸食の機会を窺う現世とは異なる理に従う存在と言われる。現れるきっかけは多種多様であり、その姿も千差万別であるが、唯一共通している点として宿主の心に巣食った後は、宿主を媒介に周囲の人間へとその影響を広げようとする傾向が指摘されている。
一度憑いた怪異たちは、宿主の意思でその存在が排除される例は少ない。宿主の器が怪異に耐えられなくなり精神を病んでしまう、命を落とすなどの理由によりその存在基盤を失うか、他者へと影響力をひろげた結果ついには確固たる形をもって現実世界に立ち現われるかの二通りの道を通るのが通常だ。
しかし、現世と異なる理を持つ怪異たちの浸食を許すことは、現世の理を揺らがせることに相違ない。すなわち、怪異とは我々を崩壊させる近くて遠い隣人である。
――西原当麻『怪異論』より
1
その日は雲が見当たらなく透き通った青空が印象的で、外に出ると太陽の光で目が霞み、外の光景は何もかもがやけに明るく見えた。
連日雨続きであったのにも関わらず、まるで狙ったかのように快晴になったものだから、出席した親戚たちは口々に姉は最後まで晴れ女であったと言う。僕もその意見には反対しないが、皆と共に明るくそのような話題をする気分ではなかった。
父や母は、残った者がいつまでも名残惜しいような表情をしていると、離れるに離れられなくなるので努めて明るく振る舞うのだと、僕や、姉の娘に言い聞かせた。姉の娘、藍はまだ小学校に上がるまえだから、父と母の話をよくわからずに聞いていたのだろう。うんうんと頷いてはいたが、こうして姉が消えていく様子を眺めている僕の手を何度も引っ張り、「ママはまだ帰ってこないの?」と尋ねてくる。
残念ながら、僕には彼女に応えられる言葉がない。二十歳をとうに過ぎて、まもなく社会に出ようとしているにも関わらず、家族が一人亡くなったことを自分の中でどう受け止めればいいか、それを考えるだけで精いっぱいだった。
「武兄ちゃん、もくもくでてる」
藍が火葬場の煙突を指差して不思議そうに声を上げる。時計を確認するに、そろそろ姉の遺体の火葬が始まったころだろう。僕は、焼香を済ませた後、葬儀場に留まる気にならなかったから、藍を連れて外に出てきた。けれども、ああして煙になっていく姉を見ると、火葬前に藍を姉と対面させてやるべきだったのではないだろうかとも思う。
僕は、しゃがみこんで藍と目線の高さを合わせ、彼女の頭を優しくなでた。藍は何故僕がそのようなことをするのかもわからず目を丸くしてこちらを見つめている。
「武兄ちゃん、どうして泣いてるの?」
「え、ああ。どうしてだろうね」
「そんなに泣いてると、またママに怒られるよ」
藍の言葉に僕は姉がよく僕に気を強く持つようにと言っていたことを思い出す。もうあのような言葉をくれる姉はいないのだ、せめて姉に心配をかけないようにしなければと思うが、一度流れ始めた涙を止めることは難しかった。恥ずかしいことに、目の前の少女に頭をなでられ「よしよし」と慰められる始末だ。これからの彼女の方が僕よりもずっと大変であるというのに。
「ママ、武兄ちゃん泣きやまないよ。早く下りてきて」
藍は、空に向かって無邪気にそう言った。藍の視線の先には火葬場の煙突から排出された煙がゆらゆらと蠢いている。どうやら、彼女は姉がどうなったのか、彼女なりに理解しているらしい。
「藍は強いな。兄ちゃんも泣かないから、大丈夫」
僕は立ちあがって、藍の頭を撫でてやる。いつまでもこうしているわけにもいかないし、まずは藍と共に両親の所に戻ろう。そう思った時だった。
「あ、ママが手を振ってるよ! ママこっち!こっち!」
藍が煙に向かって笑顔で両手を振り、駆け出していく。僕は突然の彼女の挙動に驚いてしまい、反応が一瞬遅れた。そして、その一瞬が僕から更に家族を奪い去った。煙突から吹き出た煙が地上に、藍に向かって急速に接近し、彼女を飲みこんでしまったのだ。
「藍、おい。藍!」
煙が勢いよく僕の横を通り過ぎた後、辺りからは一切人の気配が消えていた。突然、全く突然のことだ。
僕の姉、岬タエの葬儀の日、彼女の娘である藍は煙に呑まれて僕の前から姿を消した。
会社法の機関に関するちょっとしたメモ書き。
2012.06.14 Thursday
注意:あくまで条文を読んでこんな感じかなあとまとめたメモなのであって、これで全てが分かるわけでもこれが全て正しいわけでもないですし、最後は自分で勉強しましょう。条文とSシリーズの会社法とかは間違ったことを言わないはずなので、ちゃんとあたろう。
******
第1.機関設計の条文を読む前に前提として頭に置いておいた事項
前提1:会社法上の会社とは、営利を目的とする社団である。
営利性:対外的活動により利益をあげて構成員に分配することを目的とすること
前提2:会社法はいくつか会社の形態を定めているけれども、そのうち、株式会社と呼ばれるものは、株主を社員とする企業形態である。株主と呼ばれる社員は、株式の払込みという形で出資をし、出資額を限度に会社にたいして責任を負うにすぎない(有限責任)。したがって、会社の債務は会社財産のみが引当になる。
先ほどの営利性の定義に株式会社を当てはめると、株式会社とは、対外的活動により利益をあげて、株式を有する株主(構成員)に分配することを目的として作られる社団。
前提3:前提2より、株式会社に関する規制は、所有と経営を分離する場合を念頭に組み上げられていくため、業務執行は所有者(社員)である株主ではなく、株主総会で選任した取締役が(あるいは株主総会で選任した取締役が取締役会を構成し、そこで選任された代表取締役が)行い、会社を代表することになる。
第2.株式会社の機関設計に関してのメモ
(監査役や会計監査人についてはほとんど触れていません)
メモ1:会社法は社員たる株主により構成される株主総会及び業務執行機関たる取締役の組み合わせを株式会社の最小単位としている(326条1項)。
株主総会・取締役 のみで構成される株式会社においては、株主総会は万能な機関で、会社に関する一切の事項を決議することができる(295条1項)。
会社の運営方針等については持主たる株主たちが決めるという制度設計。
メモ2:しかし、株主総会が会社に関する一切の事項を決議すると、株主総会はそれ相応に会社の事業について専門的な判断等を下す必要に迫られる可能性がある。そうすると、会社を運営して利益を出すために株主にも多少手間やらコストが必要となるように思える。なにせ、会社に関する一切の事項が総会決議で決まるのだ。例えば、経営のことよくわからないなーという個人投資家とかは出資してくれないかもしれない。
そこで、もう少し所有と経営を分離した形態の会社として取締役会設置会社がある。
取締役会設置会社においては、株主総会で選任された取締役によって構成される取締役会が会社の業務執行の決定等を行ってくれる(362条2項1号)。その代わり、株主総会が決議できる事項は、定款記載事項及び法律で定められた事項に限定される(295条2項)。
メモ1における最小単位の機関で構成される株式会社と比べて、会社経営につき専門的な技術を有する取締役に対して会社の運営を任せる程度が強くなったのが取締役会設置会社、というようにイメージできる。あるいは、株主総会の権限の一部が業務執行機関たる取締役(会)へと移行したというイメージ。
なんにせよ、メモ1の会社に比べると、取締役会設置会社は所有と経営の分離がすすんだ形態の会社である。
メモ3:ちなみに、取締役会設置会社は、取締役会の中で選出された代表取締役が業務執行を行う(362条2項3号、363条1項1号)。また、取締役会の他に、監査役会という機関を設置する必要がある(327条1項2号)。そして、監査役会を構成する役員である監査役は株主総会により選任される(329条1項)。取締役以外に設置できる機関についての役割は、各機関についての業務を規定した条文や選任資格に関する条文をみればわかるので、メモ3では割愛するが、取締役会設置会社においては、株主総会が各種機関の役員を決めるという形で会社の意思決定に関わっている。
以上のことを記憶の片隅において、委員会設置会社の規定を眺めると、委員会設置会社は取締役会設置会社に比べ、更に所有と経営の分離が進んだ形態であることがわかると思う。
すなわち、委員会設置会社とは、株主総会により選任された取締役により構成する取締役会の決議によって、各委員会(指名委員会・監査委員会・報酬委員会)の委員が選出され(400条2項)、さらに取締役会は業務執行者たる執行役を選任する(402条1項、なお執行役は取締役でなくてもよい)。実際の業務執行は原則として執行役によって行われる(418条)。なお委員会の中に監査委員会があるので、委員会設置会社においては監査役を選任する必要がなく、監査役を設置できない(327条2項)(したがって、監査役の選任という権限が株主総会から失われていることになる)。
このように制度を眺めていくと、委員会設置会社は、取締役会設置会社と異なり、取締役と業務執行機関を切り離し、独自の業務執行機関をおくことにより、取締役会を執行役の監督や業務執行の決定に関する業務に専念させようとしていることがわかる。更に、取締役会の決議において各種委員会の委員が選任されるため、この限りにおいて取締役会設置会社において株主総会が担っていた役割が取締役会にスライドしている。
メモ4:メモ1~メモ3については、取締役を起点に条文から株式会社の機関設計の違いを考えた覚書です。直前期に条文を素読したときにもこのような発想で各種条文の違いを読んでいったように思います。
特に今回のメモは会社法が用意している各種機関設計を、所有と経営の分離の程度の違いという視点から分解してみたものですが、会社法上の機関には株主総会と取締役の他に、監査役や会計監査人といったものもあります。今回のメモ書きでは、そのあたりの役割については触れていませんが、それは条文を素読するというのは、(決議の定足数等は覚えざるをえないけれども)制度・条文を何度も読んで暗記することを意味するのではなく、条文全体から制度設計を読み解くことなのではないか、という私見を示す意図があったためです(あと単純に時間が足りなかった)。会社法に関しては、落ち着いて各種条文を外観し、互いに比較対照する訓練をすることが案外と楽な勉強方法なのではないかと思います。
******
とりあえずはこんな感じ。相変わらず改行等に気がいっていないのでちょっと読み難いですが。
******
第1.機関設計の条文を読む前に前提として頭に置いておいた事項
前提1:会社法上の会社とは、営利を目的とする社団である。
営利性:対外的活動により利益をあげて構成員に分配することを目的とすること
前提2:会社法はいくつか会社の形態を定めているけれども、そのうち、株式会社と呼ばれるものは、株主を社員とする企業形態である。株主と呼ばれる社員は、株式の払込みという形で出資をし、出資額を限度に会社にたいして責任を負うにすぎない(有限責任)。したがって、会社の債務は会社財産のみが引当になる。
先ほどの営利性の定義に株式会社を当てはめると、株式会社とは、対外的活動により利益をあげて、株式を有する株主(構成員)に分配することを目的として作られる社団。
前提3:前提2より、株式会社に関する規制は、所有と経営を分離する場合を念頭に組み上げられていくため、業務執行は所有者(社員)である株主ではなく、株主総会で選任した取締役が(あるいは株主総会で選任した取締役が取締役会を構成し、そこで選任された代表取締役が)行い、会社を代表することになる。
第2.株式会社の機関設計に関してのメモ
(監査役や会計監査人についてはほとんど触れていません)
メモ1:会社法は社員たる株主により構成される株主総会及び業務執行機関たる取締役の組み合わせを株式会社の最小単位としている(326条1項)。
株主総会・取締役 のみで構成される株式会社においては、株主総会は万能な機関で、会社に関する一切の事項を決議することができる(295条1項)。
会社の運営方針等については持主たる株主たちが決めるという制度設計。
メモ2:しかし、株主総会が会社に関する一切の事項を決議すると、株主総会はそれ相応に会社の事業について専門的な判断等を下す必要に迫られる可能性がある。そうすると、会社を運営して利益を出すために株主にも多少手間やらコストが必要となるように思える。なにせ、会社に関する一切の事項が総会決議で決まるのだ。例えば、経営のことよくわからないなーという個人投資家とかは出資してくれないかもしれない。
そこで、もう少し所有と経営を分離した形態の会社として取締役会設置会社がある。
取締役会設置会社においては、株主総会で選任された取締役によって構成される取締役会が会社の業務執行の決定等を行ってくれる(362条2項1号)。その代わり、株主総会が決議できる事項は、定款記載事項及び法律で定められた事項に限定される(295条2項)。
メモ1における最小単位の機関で構成される株式会社と比べて、会社経営につき専門的な技術を有する取締役に対して会社の運営を任せる程度が強くなったのが取締役会設置会社、というようにイメージできる。あるいは、株主総会の権限の一部が業務執行機関たる取締役(会)へと移行したというイメージ。
なんにせよ、メモ1の会社に比べると、取締役会設置会社は所有と経営の分離がすすんだ形態の会社である。
メモ3:ちなみに、取締役会設置会社は、取締役会の中で選出された代表取締役が業務執行を行う(362条2項3号、363条1項1号)。また、取締役会の他に、監査役会という機関を設置する必要がある(327条1項2号)。そして、監査役会を構成する役員である監査役は株主総会により選任される(329条1項)。取締役以外に設置できる機関についての役割は、各機関についての業務を規定した条文や選任資格に関する条文をみればわかるので、メモ3では割愛するが、取締役会設置会社においては、株主総会が各種機関の役員を決めるという形で会社の意思決定に関わっている。
以上のことを記憶の片隅において、委員会設置会社の規定を眺めると、委員会設置会社は取締役会設置会社に比べ、更に所有と経営の分離が進んだ形態であることがわかると思う。
すなわち、委員会設置会社とは、株主総会により選任された取締役により構成する取締役会の決議によって、各委員会(指名委員会・監査委員会・報酬委員会)の委員が選出され(400条2項)、さらに取締役会は業務執行者たる執行役を選任する(402条1項、なお執行役は取締役でなくてもよい)。実際の業務執行は原則として執行役によって行われる(418条)。なお委員会の中に監査委員会があるので、委員会設置会社においては監査役を選任する必要がなく、監査役を設置できない(327条2項)(したがって、監査役の選任という権限が株主総会から失われていることになる)。
このように制度を眺めていくと、委員会設置会社は、取締役会設置会社と異なり、取締役と業務執行機関を切り離し、独自の業務執行機関をおくことにより、取締役会を執行役の監督や業務執行の決定に関する業務に専念させようとしていることがわかる。更に、取締役会の決議において各種委員会の委員が選任されるため、この限りにおいて取締役会設置会社において株主総会が担っていた役割が取締役会にスライドしている。
メモ4:メモ1~メモ3については、取締役を起点に条文から株式会社の機関設計の違いを考えた覚書です。直前期に条文を素読したときにもこのような発想で各種条文の違いを読んでいったように思います。
特に今回のメモは会社法が用意している各種機関設計を、所有と経営の分離の程度の違いという視点から分解してみたものですが、会社法上の機関には株主総会と取締役の他に、監査役や会計監査人といったものもあります。今回のメモ書きでは、そのあたりの役割については触れていませんが、それは条文を素読するというのは、(決議の定足数等は覚えざるをえないけれども)制度・条文を何度も読んで暗記することを意味するのではなく、条文全体から制度設計を読み解くことなのではないか、という私見を示す意図があったためです(あと単純に時間が足りなかった)。会社法に関しては、落ち着いて各種条文を外観し、互いに比較対照する訓練をすることが案外と楽な勉強方法なのではないかと思います。
******
とりあえずはこんな感じ。相変わらず改行等に気がいっていないのでちょっと読み難いですが。
未完成テキスト鳥
2012.05.26 Saturday
愛の言葉を語れと言われたので(電波
*******
女性の過度なダイエットは、見ていて痛々しくて、正直萎えるよなーなんて言っている男子諸君がいるが、俺は女性のダイエットほど美しいものはないと自負している。昨今モデルのやせすぎが問題になっていたが、何故あれほどまでにやせることに危惧感を覚えるかが理解できない。すらりとしたシルエット、長い足、長い腕、細いウエスト。不必要な肉体を限界まで絞り切った身体には彼女たちが自らの身体を変化させることで、自分を縛っていたものから自由になるのだという力強い意思を感じる。
世の男子諸君の中には、女は多少ふくよかな方がよいなどという輩がいるが、彼らは大きな見誤りをしているに違いない。ふくよかであるということは、すなわち不必要な重りを身体に残しているということだ。美しくない。効率的ではない。その分、そのふくよかな彼女たちは自由を奪われている。軽く、美しい女性たちに比べて明らかに劣っているのだ。それがわからないで、ふくよかな女性を求める男子たちは、おそらく心のどこかで女性は自分たちの支配下に置かれればよいなどという独占欲じみた下卑た考えを持っているに違いない。
その点、俺は彼らとは一線を画している。俺は女性を独占しようなどという考えを持つことはない。自由な女性は素晴らしい。女性は何かに縛られて生きるべきではない。いや、女性に限らず全ての人間は自由であるべきなのだ。だから、自由を求めて懸命に努力する女性たち全てに愛情を持つことはあれど、独占しようなどとは考えたこともない。俺は全ての女性、もちろん男性も含めて人間は自由になるべきだと思っている。俺たちはこの星が与えてくれているおおきな空間を享受しきれていない、四角くて堅いビルディングばかり立てて、地下や建物の中に引きこもるなんてもってのほかだ。俺たちの上に広がっている広大な空のことを忘れているとしか思えない。
この空を飛びまわる。俺たちは地上に縛りつけられて、不自由な生活を送っているが、その鎖を外して空へと舞い上がることで、一歩自由な世界へと踏み出せるのだ。
だが、残念ながら通常、人間の体は空を飛ぶには少々重い。余計なものが多すぎるために、俺たちは空へと飛び立つことが難しいのだ。
故に日々ダイエットを続ける女性たちは素晴らしい。彼女たちが見る見るうちに綺麗になっていくのは、彼女たちの余計なものがなくなっていき、新たな自由への扉を開く、空へと飛び上がる準備が進んでいるからに違いない。
もっとも、彼女たちは少々怖がりらしく、いくら体重を落としても空へと飛び立つ第一歩が踏み出せない。だから、俺は彼女たちが自由を手にするために助力をしているのだ。俺のように空を自由に飛びまわれるための第一歩のために、ほんの少しだけ背中を押してやる。
今まで手伝った女性たちは飛ぶためには少々軽さが足りなかったらしく、飛ぶことができず地上に縛りつけられてしまった。しかし、今回の女性は彼女たちに比べるとはるかに軽い。少しの勇気さえあれば、彼女は空を飛べる。
6階建てのビルの屋上、落下防止用の柵の向こう側に彼女は立っている。恐怖で凍りつきそうな表情は、俺の声を聞いた途端かき消えた。今は自由の扉の前に立ち、恍惚そうな笑顔を浮かべているに違いない。もっとも、俺には彼女の後頭部しか見えないのだが。
さて、彼女が空を飛ぶきっかけを与えるために、最後の一声を上げるとしよう。
俺は、翼を大きく広げて胸にめいいっぱい空気を吸い込んで……
********
こういう周りのこと見えてない愛情たっぷりな人は怖い。
*******
女性の過度なダイエットは、見ていて痛々しくて、正直萎えるよなーなんて言っている男子諸君がいるが、俺は女性のダイエットほど美しいものはないと自負している。昨今モデルのやせすぎが問題になっていたが、何故あれほどまでにやせることに危惧感を覚えるかが理解できない。すらりとしたシルエット、長い足、長い腕、細いウエスト。不必要な肉体を限界まで絞り切った身体には彼女たちが自らの身体を変化させることで、自分を縛っていたものから自由になるのだという力強い意思を感じる。
世の男子諸君の中には、女は多少ふくよかな方がよいなどという輩がいるが、彼らは大きな見誤りをしているに違いない。ふくよかであるということは、すなわち不必要な重りを身体に残しているということだ。美しくない。効率的ではない。その分、そのふくよかな彼女たちは自由を奪われている。軽く、美しい女性たちに比べて明らかに劣っているのだ。それがわからないで、ふくよかな女性を求める男子たちは、おそらく心のどこかで女性は自分たちの支配下に置かれればよいなどという独占欲じみた下卑た考えを持っているに違いない。
その点、俺は彼らとは一線を画している。俺は女性を独占しようなどという考えを持つことはない。自由な女性は素晴らしい。女性は何かに縛られて生きるべきではない。いや、女性に限らず全ての人間は自由であるべきなのだ。だから、自由を求めて懸命に努力する女性たち全てに愛情を持つことはあれど、独占しようなどとは考えたこともない。俺は全ての女性、もちろん男性も含めて人間は自由になるべきだと思っている。俺たちはこの星が与えてくれているおおきな空間を享受しきれていない、四角くて堅いビルディングばかり立てて、地下や建物の中に引きこもるなんてもってのほかだ。俺たちの上に広がっている広大な空のことを忘れているとしか思えない。
この空を飛びまわる。俺たちは地上に縛りつけられて、不自由な生活を送っているが、その鎖を外して空へと舞い上がることで、一歩自由な世界へと踏み出せるのだ。
だが、残念ながら通常、人間の体は空を飛ぶには少々重い。余計なものが多すぎるために、俺たちは空へと飛び立つことが難しいのだ。
故に日々ダイエットを続ける女性たちは素晴らしい。彼女たちが見る見るうちに綺麗になっていくのは、彼女たちの余計なものがなくなっていき、新たな自由への扉を開く、空へと飛び上がる準備が進んでいるからに違いない。
もっとも、彼女たちは少々怖がりらしく、いくら体重を落としても空へと飛び立つ第一歩が踏み出せない。だから、俺は彼女たちが自由を手にするために助力をしているのだ。俺のように空を自由に飛びまわれるための第一歩のために、ほんの少しだけ背中を押してやる。
今まで手伝った女性たちは飛ぶためには少々軽さが足りなかったらしく、飛ぶことができず地上に縛りつけられてしまった。しかし、今回の女性は彼女たちに比べるとはるかに軽い。少しの勇気さえあれば、彼女は空を飛べる。
6階建てのビルの屋上、落下防止用の柵の向こう側に彼女は立っている。恐怖で凍りつきそうな表情は、俺の声を聞いた途端かき消えた。今は自由の扉の前に立ち、恍惚そうな笑顔を浮かべているに違いない。もっとも、俺には彼女の後頭部しか見えないのだが。
さて、彼女が空を飛ぶきっかけを与えるために、最後の一声を上げるとしよう。
俺は、翼を大きく広げて胸にめいいっぱい空気を吸い込んで……
********
こういう周りのこと見えてない愛情たっぷりな人は怖い。